23時の丸い虹

 7月の虹。撮った時間は23時。そう、夜の11時だ。撮影した日は、白夜の影響で陽が沈むのが24時頃だったので、23時に夕陽が注いで虹がかかったのだ。
 アラスカでは夏至の頃、24時間陽が沈まない。正確にいうとアラスカ全土で24時間陽が沈まないわけではなく、緯度によって日照時間が異なり、アラスカの大抵のエリアでは日照時間が20時間ほどになる。
 白夜の頃はずっと明るいので、1日の行動時間が長くなる。この日も、ワンダーレイクというキャンプ場を出たのが朝6時。雨のなか、全ての荷物を持って歩き続け、平らな場所を見つけてテントを張ったのが18時。この日は丘の上で撮影しようと決め、テントにいくつかの装備を置き、重量の軽いビバーク装備に切り替えて、丘を2つ登った。ビバーク用のツェルトを張ったのが22時過ぎだ。それから夕食を取った。
 ふと、雨が止んでいることに気付いた。
 「おや、虹が出るかな」
 周囲を観察していると、地面から右斜め上に伸びる小さな虹が見えてきた。それはみるみるうちに大きくなり、何キロか右にあった左斜め上に伸びる短い虹と合流して、一つの半円を描いた。2分後、強く大きくなった虹はドーム状の光の塊となり、少しづつ東に動きながら、わずか数分で消えていった。夢中で撮影した。
 虹が消えたあと気付いたら、興奮して呼吸を止めていたのか息が苦しい。ブハーっと、急いで大きく深呼吸をした。
 この虹を、日本にいるみんなに見せたかった。忙しくてくたびれているみんなが空を見あげて、深呼吸ができたらどれだけいいかと思った。今の僕にできるのは、想像力を刺激することだけだ。
 今この瞬間も、きっとどこかで大きな虹が架かっている。深く呼吸をして、目を瞑(つむ)って、大きな虹を想像してみて欲しい。

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