鳴くジリス

 アラスカで一番好きな生き物は? と聞かれると答えに詰まってしまう。だが、撮影していて一番リラックスできるのは間違いなくリスだ。

 これはホッキョクジリスという地面に巣を作るタイプのリス。好奇心も警戒心も強い。
 僕が休憩していると、数メートル離れた巣穴から顔を出して、様子をうかがってくる。こちらが動くと、"ピッ" と "キャッ" の間くらいの甲高い声で鳴いて、巣穴に隠れてしまう。それなのに、あまり目がよくないのか、僕がじっとしていると、すぐにこちらを見失ってしまう。

 「匂いと気配で何かがいるのはわかってるぞ! みんなは巣穴から出てくるなよ!」
 この写真は顔を出したジリスが警戒の声を上げた瞬間である。
 すぐ終わるから、ちょっと撮らせてね、と泣いている子どもをあやしているような気持ちになった。僕がそこにいるせいで警戒させてしまっており申し訳ないのだが、その姿はいつも愛らしい。

 ツンドラの中にいくつも穴が開いている場所があれば、そこは間違いなくジリスの巣だ。多いと7~8頭の家族で住んでいる。大型の哺乳類の家族を見ても同じことを思うのだが、どの子どもも好奇心が強く、親やリーダーは落ち着いている。そしてリーダーが落ち着いていれば、その集団はパニックにならない。
 リーダーとはこうあるべき、という凛とした態度で、周囲の情報をよく見聞きしている。脳の容量や体の大きさは関係ない。経験したことのない出来事を目にした時でも、こうありたいものだと思う。

グリズリーが地面を掘った跡。土の中の生活は雨風を気にしなくていいなあと思っていたが、土中ライフもこうして荒らされることもある
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