マイカー

 アラスカ中央部に位置する都市、フェアバンクスにはマイカーが置いてある。マイカー、と言うのも恥ずかしいくらいボロボロの車。カナダのバンクーバーで安く購入し(後に修理代で新車1台を買うくらいかかった...苦笑)、アラスカまで運転して運んできた。

 撮影は、この車に乗って道路で行けるところまで行き、そこからはすべての装備を担いで歩くのが僕のスタイルだ。
 燃費が異常に悪いため、余計な炭素排出に心が痛むのだが、僕の撮影は彼女がいないと成立しない。余談だが、アメリカでは車などの機械を呼ぶときの代名詞は "She" である。
 車中に簡易ベッドを作り、もうどれだけホテル代わりに使わせてもらったかわからない。食材や機材の倉庫代りにもなってもらっている。プラスもう一つ、とても大事な役割を果たしてくれている。いつも一人で撮影している僕の感動の共感役である。
 ある年の6月、北極圏のユーコン川近くにいた時。24時頃、空全体がピンクと銀の間のような色で染まっていた。不思議な光景だった。
 「おー」
 思わず声が出たが、当然周りには誰もいない。
 「あの色見た?」「きれいだね」
 僕は彼女に話しかけた。彼女は黙って聞いてくれる。

 新型コロナウイルスのために、2020年はアラスカに行けなかった。「寂しくないですか?」とよく聞かれるのだが、寂しさより車を放置してしまっていることが気がかりだ。

帰国前に、装備を整理しているときの様子。フェアバンクスのマイカーの中に置いていくもの、日本に持ち帰るものを分ける。ちなみに2021年5月現在、マイカーの中には多くの装備が置いてある。次に会う時、果たして彼女は無事に動いてくれるだろうか…。
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