家族のワンシーン

 この写真を撮ったのは7月上旬。写っているのは生後5~6カ月のグリズリーの兄弟だ。春になって巣穴から出てきたばかりで、外の世界に興味津々。気になるものはなんでもかじったり、兄弟ふたりでレスリングや追いかけっこしたりと、なんとも楽しそうだ。
 今、この子グマたちの目線の先にいるのは彼らの母グマ。ふたりでお母さんが遡上してくる鮭を捕まえてくれるのを待っている。
 数分ほど前までは、子どもたちも一緒に海に浸かっていたのだが、まだ体に脂肪が足りない。すぐに体が冷えてしまうらしく、震えながら陸に上がってきた。兄弟は体をくっつけて、お母さんの漁を見守っているのだ。
 母グマは、オスグマが来ないかと常に周囲を気にしながら、じっと海の中を見ている。水深30~40センチのところで待っているのだが、良く海の中にいる魚が見えるものだといつも思う。

 いざ鮭がそばに来ると、母グマはものすごいスピードで走り出す。その速度は40キロにもなると言われるほどだ。首尾よく鮭を捕まえると岸まで持ってきて、あっという間に平らげてしまう。なぜそんなに急いで食べるのかと言いたくなるほど早い。
 漁を見守っていた子グマたちはガーガー叫んで分け前を主張する。鮭を与えてもらうこともあれば、場合によってはほぼ全てを母グマが食べることもある。
 子供に分け与える、もしくは自分の栄養にする。子供たちにたっぷり授乳するためには、自分もたくさん食べないといけないし、子どもに狩りの姿も見せなくてはいけない。子グマたちが巣立つ約3年後には、この子たちも自分で捕まえられるようになっていないといけないし、実際捕まえているのかと思うと野生のたくましさを感じる。そのあたりの塩梅は母グマにしかわからない。いやしかし、どの世界でも子育ては大変だなと思う。

 1時間後、彼らが森に消えていくまでの間、家族の時間を見学させてもらった。この翌年、彼らとまた会えた時も、この兄弟は元気にしていた。まるで親しい友人の一家を見るかのような温かい気持ちになった。

母グマが走り出すと、立ち上がって漁を応援する。その姿が最高に可愛らしい。
見つけた!と鮭を追いかけたのだが、逃がしてしまった母の背に向かって「惜しかったよー」とでも言っているかのような子グマたち。
こちらは捕まえる直前。この時は子グマと分け合って食べていた。
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