フェアバンクスのガレージで ―タイムラプスを撮る その1

 2018年9月、満月とオーロラを撮るべく、フェアバンクスに入った。今回は写真だけでなく、タイムラプスを残すのも目的だ。タイムラプスとは、大量の写真を繋げて動画にして見せる技法のこと。例えば1分に1枚撮影し、それを3時間かけ180枚撮る。それを1秒間に18枚繋げれば、3時間が10秒の動画にまとまるというわけだ。アラスカの北極圏で、日が昇って、沈んで、月が出て、オーロラが出て、という"地球の営み"を動画にして伝えたかったのだ。
 フェアバンクスの空港に着くと、その街に住む友人のチョウが待っていてくれた。チョウはイケメン韓国人で、10年以上前にアメリカに移住、今はフェアバンクスでホステルを経営している。手荷物受取所の回転台の前で大量の荷物を背負おうとしている僕を見て、「小さいバッグは僕が持つね。大きい方はダイシが持って」と冗談を交えつつ、手を貸してくれる優しいチョウ。実際には小さい方がカメラ機材が詰まっており、大きいザックより重かったのだが。

 彼のSUVに乗って、15分ほどで彼が営業しているホステルに着いた。チョウのガレージにはマイカーを置かせてもらっており、そこに前回の遠征の装備や食材がたくさん残してある。今回、日本から持ってきた荷物と合わせ、撮影に必要なものを選んでいくのがいつも大変なのだが、なんだかんだで楽しい時間。パソコンでお気に入りの曲をかけて、ガレージの中でひとり過ごす。今回の肝は、やはりタイムラプス用機材だ。48時間は作動させっぱなしにしたいので、機材は多くなる。そうは言っても自分が背負える範囲で選ばなくてはいけない。
 三脚2本、15万mAh分のモバイルバッテリー、パンニング用モーションコントロール(カメラの下でクルクル回る機械)、レンズに巻くレンズウォーマー、レベリングユニット(カメラを水平に保つ為の台座)は欠かせないだろう。それらに加え、カメラ2台、レンズ6本は必須。やたら多いのは各種ケーブルだが、必要なものを選び、カメラバッグに詰める。ギアは、マイナス15度までを想定してテント、寝袋、マット、帽子、手袋、ダウンジャケット2種、ピッケル、ヒップブーツ(太もも上くらいまでの長靴のようなもの)、想像より寒かった時のため、冬用ブーツも選んだ。
 食材はラーメンやパスタなどの乾物を中心に、野菜は全てフリーズドライのものを詰め込む。フリーズドライの野菜は10倍の量に膨らむので、遠征時のマスト食材。お米はいつの頃からか持ち歩かなくなった。車中泊の時の贅沢になった感がある。どんな調理もフライパン一つ、しかも茹でるだけで済むようにしている。バーナーはいつも夕食の際しか使わないから、燃料は30食分で十分だろう。水はおそらく途中で確保できるが、6リットル準備した。
 置きっぱなしだった各種装備やレンズの掃除などもしながら、4時間ほどかかって荷物がまとまった。最初の1~2泊は車中泊になるので、車中にベッドのスペースを残す必要もある。まとめた機材やギアを車に詰め込みながら、あぶれたものたちはガレージに置いている大きなボックスに入れ、鍵をかける。ここはアメリカ、ましてホステルには不特定多数の人が出入りする。いくら友達のホステルのガレージとはいえ、自分のものは自分で守らないといけない。
 フェアバンクスに着いてまだ半日も経っていない。撮影の準備をひと段落させた僕は、少しくたびれてガレージを出た。

アラスカでホステルを経営するチョウは韓国から移住した。
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