シュラブ帯の先で ―タイムラプスを撮る その8

 朝食を食べた後、使い終わったバッテリーと予備のバッテリーの一部、それと10食分の予備の燃料や、使わなそうなインナーや手袋などをケースに入れた。そのケースだけをザックに入れ、30分ほど山を登った。帰りにも通るであろうポイントまで運び、岩の隙間にケースをデポする。1週間ほど後にここを通る時に回収するのだ。こうしてザックの重量を減らし、山脈の奥へと進んでいく。
 テントを出ると、視界がきいて遠くまで見渡せた。標高7000メートルより高いところ、高層には薄い雲がかかっていて風も冷たかったが、歩いていて気持ちがよかった。今日も昨日に引き続き、急峻な山の南斜面を東に向かって歩いていく。昨日までにずいぶん水を使ってしまったので、どこかで水を補充したい。今日は谷をいくつか越えていくから、どこかで綺麗な沢に出会うはずだ。斜面の地面は硬くて歩きやすかったが、少しずつ背の低いドワーフバーチ(ヒメカンバ)が茂ってきていた。
 何度か谷を渡っていくうちに、ドワーフバーチやヤナギがどんどん密集し、太もも~肩くらいの高さになってきた。非常に枝が硬く、歩いていくとスネや膝にバチバチ当たってすごく痛い。薄手のレインパンツは破けてしまうので、こういったエリアでは脱がないといけない。湿地帯のように、一歩一歩膝を高く上げないと進めないことにも消耗させられてしまった。
 シュラブ帯(低木が茂っているエリア)を何時間か歩くと、もう嫌になった。シュラブは標高や地形によって帯状に分布しているので、200メートルほど標高を上げる。ガレ場の高さまで来ると、歩きやすくなった。
 お昼頃から、かなり強い風が吹き始めた。ガレ場 (動画あり)まで上がると北から吹き下ろしてくる風が直接当たって、体の左半身が寒かった。足元の岩は、自分の体より大きな岩でもぐらぐらすることがある。注意は必要だが、それでもシュラブ帯よりマシに感じた。
 しかし、面倒なのは谷を渡る時だ。標高が高いところを歩いているので、谷1本ごとに低いところまで降りて、また登り返さなくてはならない。何度も繰り返すとだんだんイライラしてきた。左半身の動きも鈍ってきていたのも嫌な感じがした。なので、やはりシュラブ帯を突っ切ることにした。
 歩いているときは暑い。が、休むと寒い。特に背中は汗をたっぷりかくので、一度ザックをおろしてしまうと、背中が氷みたいに冷たくなる。それが苦手なので、休んでいる時も後ろのザックはおろさない。
 水を飲もうと、カメラザックの横に入れているボトルを取ろうとした。見当たらない。周辺で落としたかと思って探したが、見つからない。どうやらシュラブ帯で枝に弾かれて落としてしまったようだ。ボトルの上部にあるカラビナをザックの紐につけていたのだが、その紐も切れていた。悪いことに、ザックに入れている水のパックから、ボトルに満タンに入れ替えた直後のことだった。ザックの水パックを見ると残りは200cc程度しかない。
 突如として浮上した水不足。
 そういえばもう、10本以上も谷を越えたが、ちょうど良い沢は見つからなかった。夏に同じエリアを歩いた時には沢水をたくさん見かけたから、すぐ見つかるだろうと油断していた。シュラブ帯の選択は失敗だった。

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