水探しの顛末 ―タイムラプスを撮る その9

 ここからは水を探しながら歩かなければならない。シュラブと格闘しながら谷の下部に入っては水が流れている場所を探しながら歩いた。
 しばらく探したが、見つからない。昨日から0度を超える時間が少ないから、水量の少ない沢は凍ってしまっているようだ。霜柱のようになっていて、歩くとシャリシャリと音がする場所ならいくつか見つけた。とは言ってもまだ9月。流れの強い沢なら全面凍ったりはしない。地図を見ると、近くに比較的太めの谷があったので、そこを目指すことにした。
 ザックを2つ担いでいると、どんどん汗をかく。少し高台の目立つ場所にザックを置いて、残りの水と沢水を濾すフィルター、フィルター専用の水パック、それとクマスプレーだけを持って周辺を探すことにした。茂みの中を行ったり来たりしていると、少し谷を詰めた先に、幅2メートル、深さ10cmほどの凍っている沢を見つけた。
 この地形の沢は、水源から水流がずっと地上に出ているわけではなく、ツンドラの地中に浸透したり、地上に湧いたりしながら下流に向かっていく。この沢は、そうした流れのなかの地上に湧いているポイントだと思われた。
 そこの周囲数十メートルの間だけ、氷があるのが確認できる。水不足状態になって3時間。今までよりしっかりした量の水(の塊)に、少し安堵した。最悪、氷を割ってフライパンで溶かせば水は確保できる。しかし、今はできれば水が欲しかった。周辺を見渡してもほぼ氷。氷に耳をつけてみても、チョロチョロの "チョ" すら聞こえない。
 沢を改めて見回すと、両サイドにヤナギが茂っている。よく見ると、枝先を沢に浸けたまま凍っている枝がある。風に揺れている、その枝をつかんでグリグリと回してみると、わずかながら大きくなった穴から水がしみ出てきた。おそらく地面に近いところに少しだけ流れが残っているようだ。
 やった。氷の上にしみ出てきた水を舐めてみるが、冷たいばかりで飲んだ気がしない。首に巻いている手拭いに水をたっぷりと染み込ませてから飲んで、ようやくひと心地着いた。それを何度も繰り返し、フィルター用の水パックに貯めこむ。高台に置いたザックの場所まで戻ってフィルターにかけ、とりあえず600ccは確保した。

 と、その時、両手に痺れを感じた。小指と薬指がくっついて、今度は中指がグーの形に丸まっていく。その直後、体育座りの格好だった左足がブルブルと震え始めたと思うと、震えが激しくなって、工事現場でドドドドドッと地面を叩く機械のように、ガクガクと上下に揺れ始めた。
 まずい―。
 人生で何度か経験のある脱水&貧血のような症状だ。ツンドラに横になって、足をザックの上に置いて高くした。作ったばかりの水を飲み、行動食の中に入れている塩を舐め、ナッツを口に入れて、体が落ち着くのを待った。5~6分経っただろうか。手が自由に動くようになってきた。もう大丈夫だろう。
 ああ、やはりあの時、岩場を行くかシュラブを行くか、15分休憩してから考えるべきだった、と思った。結局痛い目を見ることになってしまった。

水のフィルターはいろいろ使ったが、今はこのタイプを使っている。ちなみに、氷河からくる川にはシルトと呼ばれる小さな砂が入っており、その水をフィルターにかけると、一発で詰まってしまう。エキノコックスもあるので、できるだけ水源に近いところの水を濾過するか、雪を溶かして水にするのが僕のスタイルだ。
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