信濃毎日新聞ニュース特集

2019参院選

重度身障者ら投票に壁 代筆利用には厳格な条件

2019年07月20日掲載

補助員2人の手助けで、参院選の期日前投票に臨む宮坂さん(手前中央)。「連れてきてくれる人がいなければ、投票は難しいと思う」と話す=17日、諏訪市役所

 投票所に行くことのできない重度の身体障害者らにとって各種選挙で投票しづらい状況が続いており、今参院選でも解消されていない。上肢や視覚に障害がある場合は、代理記載(代筆)による郵便投票の制度があるものの、ごく一部の障害者に限られている。投票に強い思いを持ちながら、投票できない人がいる。

 「この候補者でいいですか」。諏訪市役所の期日前投票所で17日、同市の杜氏(とうじ)宮坂恒太朗さん(39)は市選管の補助員に尋ねられ、小さくうなずいた。難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患い、手足が自由に動かない。妻のちとせさん(43)が押す車いすで訪れ、補助員が代筆した投票用紙を投票箱に入れた。

 酒造りに欠かせない水や自然環境を守りたい思いから、環境保全と社会保障の充実に期待して投票した宮坂さん。ただ、「連れてきてくれる人がいれば投票できるけれど、そうでなければ難しい」と話した。

 投票所に行けない有権者のうち、病院や高齢者施設に入所する人は、施設側が県に申請して「指定施設」になれば、施設内で不在者投票ができる。自宅から投票所まで行けない障害者や要介護5の高齢者は郵便投票ができ、文字が書けない人は代筆による郵便投票も認められている。ただ、指定施設にならない小規模施設も多く、郵便投票や代筆は対象者が限られている。

 長野市のALS患者、小林さゆりさん(55)は2006年に発病後、1度も投票していない。現在の入院先は指定施設になっておらず、小まめなたんの吸引が必要なため投票所まで行けない。身体障害者手帳は「上肢2級」で、代筆による郵便投票の対象となる「上肢1級」でもない。

 小林さんの症状は進んでおり、重度訪問介護のサービスに当たる吉村まきさん(48)=上水内郡信濃町=は、小林さんの「投票したい」思いを酌み、市の関係部署で投票できる手段を探したが、見つからなかった。

 複数の市選管によると、投票所に行くのが難しい有権者やその家族から、投票の手段がないか尋ねる問い合わせは、今回の参院選でも寄せられている。総務省選挙課によると、代理記載による郵便投票を巡っても対象拡大を求める要望はあるが、現時点で見直しの予定はないという。

 過去にALS患者の代筆による郵便投票を認めないのは違憲だとする訴訟の弁護団長を務めた元日弁連会長の村越進弁護士(68)=上田市出身=は「現状は投票所以外での投票について、なりすまし投票などを心配して条件が厳格になっている。しかし、投票できることが大事で、より投票しやすくすることに比重を置くべきだ」としている。