多様な声どう集約 「松本糸魚川道路」意見交換会


 地域高規格道路「松本糸魚川連絡道路」(東筑摩郡波田町―糸魚川市、約百キロ)建設計画について、沿線十二市町村で県主催の「意見交換会」が開かれている。県側は、住民が自由に参加し、率直に考えを出し合ってほしいとしており、住民参加を図る新たな試みといえる。ただ、これまでの会合では地域によって賛否に偏りがあり、異なる意見を交わし合うまでには至っていない。県は十一月末をめどに意見をまとめる方針だが、どう集約し、事業計画にどう反映させるのか。県側が、その手順や道筋を示していないことを指摘する意見も出ている。

 「これで住民の意見を聞いたことになるのか」。南安曇郡豊科町で九月二十日に開いた意見交換会。参加者が六人しかいない状況に、一人がぼう然とした表情を見せた。

 それから六日後―。大町市で開いた意見交換会には、約八十人が参加。六グループに分かれて議論を始めると、計画に賛成する市議四人が入ったグループはほとんどが建設促進派だった。

 意見交換会は十二市町村単位で開催。先月十八日に同郡穂高町でスタート、四日に開いた同郡梓川村と北安曇郡八坂村の会合ですべての市町村で初回を開き終えた。参加者が多い市町村はグループ分けし、それぞれ三回ほど話し合う。既に二回開いたグループもある。

 これまでの論議の向きを大別すると、南安曇郡内は松本糸魚川連絡道路の必要性を「疑問だ」とする声、大町市以北は「必要だ」とする声が目立つ。状況は意見交換会を始める前と変わらないほか、全員が「疑問」あるいは「必要」の方向というグループもあり、「論議を深めていくことに限界を感じる」と話す住民も出ている。

 こうした状況になっている背景には、県側の準備不足がある。意見交換会は、同連絡道路計画の見直しを表明した田中知事の「県全体の今後の道路のあり方を含め、ゼロから虚心たん懐に意見を聞く場にしたい」という意向に沿って企画した。

 しかし、初回に用意した資料は、経緯や調査内容などをまとめたA4判四ページのパンフレット、調査一覧表など。「要望があればさらに資料提供する」としているが、十分な情報を得た上で論議したいと言う参加者からは不評だ。

 内容も、二〇二〇年の交通量を「一日約二万五千台」と予測しているが、その根拠は、安曇野の幹線道路、県道有明大町線(通称五輪道路)開通前の九四年度データに基づいてはじき出している―といった指摘が出ている。情報が不十分な中、市町村ごとに話し合っているため、「地域事情」が前面に押し出される傾向になっているのではないかとの見方が強い。

 同連絡道路計画の賛否などを問うアンケートを四市町村で行った京都大大学院農学研究科の水野啓助手は「住民の道路に対するイメージや意見がさまざまなのに、県の手法はあまりに素人」と指摘する。

 これに対し、県道路建設課は「初めてのことなので暗中模索している。十一月中に意見をまとめる時点がスタートライン」と述べるにとどまる。

 県は、木曽郡の木曽川右岸道路構想でも、郡内十一町村で住民集会を開いた。道路完成を願う住民が大半にもかかわらず、その後の具体的展開を示せないでいる。

 住民参加に向けた試みを結実させるためには、意見交換会のやり方や情報提供を見直しながら、その後の展開の仕方をきちんと示す必要がある。

 参加者からは「大町と穂高の人たちが、同じ場で意見交換できればいいかもしれない」(相模一男・大町商工会議所会頭)といった意見も出ている。(田中泰憲、峯村健司、小幡省策記者)

(2001年10月5日 信濃毎日新聞掲載)