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県こども新聞コンクール

気になるニュース 伝えたい

小学生対象の第23回長野県こども新聞コンクール(信濃毎日新聞社と信毎販売店会主催)が行われました。興味や疑問を持ったテーマを自ら調べ、考えをまとめた新聞が県内257校から計5449点寄せられ、6地区での審査を通った135点から優秀賞15点、奨励賞30点が選ばれました。
身の回りの出来事や地域の課題、気になるニュースなどテーマはさまざま。現場へ足を運んだり、周囲の大人や専門家に話を聞いたりして取材を深めています。見出しや写真、イラストを工夫した新聞には、子どもたちの社会への思いやメッセージがあふれています。
優秀賞作品と作者のコメントを紹介します。(受賞者名の前にある市町村名は学校のある所です)

「先生のひとこと」は、県教育委員会学びの改革支援課指導主事の荒井和之さんに書いていただきました。

優秀賞

1.2年

ぜん光じなかみせ通り新聞

ぜん光じなかみせ通り新聞

長野市・長野日大小・2年 柳澤 篤仁(やなぎさわ あつひと)さん

お客さんが来たか調べた

「仲見世通りは自分の家に近いのでよく行っています。昨年は新型コロナウイルスの影響を調べ、お客さんがとても減って善光寺御開帳でたくさんのお客さんが来てくれることを期待していることが分かったので、今年は御開帳の効果を調べることにしました。話を聞いた3店とも、御開帳が開催されて良かったと言っていました。重要な場所や見出しは色を付けて目立たせて工夫しました。写真もうまく撮れました」

先生のひとこと

昨年と今年とを比較した調査結果、非常に興味深いです。お客さんが増えた喜びの裏にあるお店の方の苦労も伝わってきます。

ぼくの街に住むホタル新聞

ぼくの街に住むホタル新聞

松本市・才教学園小2年 山野 湊太(やまの そうた)さん

手に乗って光る姿を観察

「もともと昆虫が大好きで、光る姿がきれいなホタルをもっと調べたいと思い、テーマに選びました。ホタルがいる公園での観察会に何度も参加したり、信州大理学部の名誉教授を訪ねて話を聞いたりしました。ホタルは体が柔らかく、捕まえるとつぶれてしまうので、手に乗った姿を観察し、画像をインターネットで調べて絵を描きました。いろんな生き物がすめる自然を大切にして、ホタルの光を守りたいと思います」

先生のひとこと

街中でホタルが見られることは素晴らしいことですね。人もホタルも共に住める自然を守ろうという強い思いが伝わってきます。

3.4年

くらしを助けるAI新聞

くらしを助けるAI新聞

長野市・徳間小4年 秋山 ゆり(あきやま ゆり)さん

身近な所で使われている

「家にあるAI(人工知能)スピーカーとしり取りをしていた年長園児の妹が『中には人間が入っているの?』と私に聞いてきたことがきっかけで、AIについて詳しく調べてみました。インタビュー内容など、載せたいことがたくさんあって、何を新聞に載せるか悩みました。分かりやすくするため、写真を多めに使い、イラストも付けました。身近で使われ、暮らしを助けてもらっているAIをみんなに知ってほしいです」

先生のひとこと

生活のさまざまな場面でAIが活用されていることが伝わってきます。人間と同じようにAIも勉強するという視点、興味深いです。

未来の平和新聞

未来の平和新聞

長野市・長野日大小4年 久和 春花(くわ はるか)さん

昔の戦争 近くには地下壕

「ロシアのウクライナ侵攻のニュースが気になっていたところ、お母さんから自宅の近くにも地下壕があると聞きました。戦争は遠い昔のことだと思っていたけど、空襲の体験者が近くで生きていて、地域でも亡くなった人がいるのは悲しいと思いました。たくさん調べたのでまとめるのは難しかったけど、体験者のインタビューは目立つ場所に配置しました。大人になるときには平和な世界が当たり前になっていてほしいです」

先生のひとこと

地域の地下壕から平和について考えました。庭に咲いたアサガオから、77年前の子どもたちに思いをはせるその姿が印象的です。

本当に買える?安すぎる!!空き家新聞

本当に買える?安すぎる!!空き家新聞

上田市・清明小4年 小林 凪(こばやし なぎ)さん

お小遣いで買えなかった

「新聞で空き家が100円で売られていることを知って、自分のお小遣いでも買えるかもしれないと思い、調べることにしました。市役所などで話を聞き、私が住む上田市にもたくさんの空き家があると知りました。空き家は100円で買えても、リフォームや不用品処分をすると1千万円以上は必要で、私のお小遣いでは買えないことも分かりました。空き家の管理はとても大変だということを知ってもらえたらうれしいです」

先生のひとこと

インパクトのあるタイトルが目をひきます。有効活用や課題について、実際に足を運び、得た情報をもとにわかりやすくまとめました。

食用コオロギ新聞

食用コオロギ新聞

諏訪市・上諏訪小3年 渡辺 誠一朗(わたなべ せいいちろう)さん

食べられる昆虫 探したい

「食用コオロギを育てる『クリケットファーム』(岡谷市)のチラシを見て、虫が好きなので興味を持ちました。見学に行って従業員のお姉さんに話を聞いたり、ホームページを見たり、図書館で本を調べたりしました。表を作るのがすごく大変で、お父さんとお母さんに計算を手伝ってもらいました。文章の大事なところは見落とさないように色を付けました。他にも食べられる昆虫がいないか探してみたいと思いました」

先生のひとこと

コオロギが環境問題や食糧問題の解決につながることに驚きです。信州で食べられてきた昆虫との接点についても納得です。

高遠 バス停アート新聞

高遠バス停アート新聞

伊那市・美篶小4年 保科 壱緒(ほしな いお)さん

誰が作ったか気になった

「高遠のおじいちゃんの家に車で行く途中でかわいいバス停を見つけ、誰が作ったのか気になってテーマにしました。調べてみると、寒い中、大工さんたちが苦労して花や生き物の飾りを作ったことが分かりました。どんなバス停か分かりやすく伝えるために、アートになっている22カ所を巡って写真を撮り、バス停順に縦に並べて見やすくなるように工夫しました。今度はバスでおじいちゃんの家に行ってみたいです」

先生のひとこと

それぞれのバス停に実際に足を運ぶことで、込められた思いを感じたことでしょう。写真の配置を考えた紙面も目をひきます。

ウクライナ平和新聞

ウクライナ平和新聞

高森町・高森北小3年 尾地 悠進(おち ゆうしん)さん

アルセーニ君の苦労知る

「1学期の途中で、ウクライナから高森町に避難したアルセーニ君がクラスに加わりました。身ぶり手ぶりで触れ合ううちに仲良くなり、ウクライナのことや日本での生活の様子を尋ねて、新聞にまとめたいと思いました。通訳の人の協力で話を聞いてみると、故郷とは違う文化の中で暮らす苦労が分かりました。自分が今できることを考えて、募金にも取り組みました。いつかウクライナが平和になり、旅行に行くことが夢です」

先生のひとこと

「友達の夢がかなう平和な世界になってほしい」、優しさと重みのある言葉です。翻訳機を使ったインタビューも興味深いところです。

5.6年

未来に残そう!!郷土料理新聞

未来に残そう!!郷土料理新聞

坂城町・坂城小5年 冨山 心菜(とみやま ここな)さん

おやき作り 難しさ知った

「おばあちゃんが作ってくれるニラせんべいやおやきについて詳しく知りたくて、調べることにしました。作り方をおばあちゃんに取材したり、長野県の郷土料理について調べたりしました。実際に作ってみると思ったよりも大変です。あまり知らずに食べていた料理の成り立ちや、調理作業の難しさを知ることができて良かったです。自分でも作れるようになって、教えてくれたおばあちゃんやお母さんに食べてほしいです」

先生のひとこと

実際に作ることで伝統を大切にしたいという思いがより強くなりましたね。おいしさやあたたかさが紙面からも伝わってきます。

女子野球の未来は明るいです!!新聞

女子野球の未来は明るいです!!新聞

上田市・中塩田小5年 小林 向日葵(こばやし ひまわり)さん

女子野球も「当たり前に」

「小学3年の時から野球のクラブチームに入っています。8月に松本市で開かれた女子野球タウンフォーラムに参加し、野球人口を増やしたいと思いました。ニュースで高校女子野球の全国大会決勝が甲子園で開かれたことを知り、インターネットで調べてみると、盛り上がりや知名度が男子に比べて低いことが分かりました。女子野球も当たり前の世の中にするために、大人になったら女子野球に関わる仕事をしたいです」

先生のひとこと

女子野球を取り巻く現状や課題についてまとめています。携わる方々の思いや魅力を感じ、自分の目標とする姿に心強さを感じます。

上田の温暖化新聞

上田の温暖化新聞

上田市・丸子中央小6年 荻原 瑞月(おぎはら みづき)さん

セミの抜け殻が示す変化

「8月にセミの抜け殻を集める活動に参加しました。地球温暖化とセミの暮らす場所が関係していると聞き、調べてみたいと思いました。気温が上がり、生き物が以前と同じ気温の場所を探す場合、山腹より平野の生き物の方が移動距離が長いということを知りました。気温の変化に対応できない生き物が絶滅してしまう可能性もあるそうです。身近な生き物の暮らしに地球温暖化が影響していることを知ってもらいたいです」

先生のひとこと

たくさんの種類のセミがいることにまず驚かされました。セミの抜け殻から地球温暖化について考える視点、非常に興味深いです。

さらば!!臼田小学校新聞

さらば!!臼田小学校新聞

佐久市・臼田小5年 加藤 景(かとう けい)さん

家族3世代で通った記録

「家族3世代で通った臼田小が来年3月で閉校になってしまうので、記録に残したいと思いました。おばあちゃんやお父さん、お兄ちゃんに思い出を聞きました。昔は給食に脱脂粉乳が出たと初めて知りました。お父さんは子どもの時、学校の池のコイを釣ろうとして怒られたそうです。臼田小のことがたくさん分かって、改めて歴史ある臼田小がなくなるのがさみしいなと思いました。来年は新校のことを新聞に書きたいです」

先生のひとこと

家族三世代で同じ学校の話題を共有できること、大変貴重ですね。学校の歴史や実際に時を過ごした思い出があふれる紙面です。

多文化共生新聞

多文化共生新聞

松本市・鎌田小5年 浦野 千紗都(うらの ちさと)さん

外国人の暮らしに安心を

「家族で東南アジアの料理店によく行くので、松本に住む外国人の暮らしに興味を持ちました。外国人に取材する時は、分かりやすい日本語ではっきり話すことを意識しました。多文化共生プラザ相談員の犬飼プリヤモンさんはタイ出身で、学校のお便りを代わりに読んだり、授業参観に一緒に行ったりして外国人を支えています。安心して暮らすための活動を多くの人に知ってもらい、応援する人が増えたらいいなと思います」

先生のひとこと

誰もが幸せな社会、大事なキーワードです。その国の料理を知ったり、実際に食べたりすることも共生の大事な視点ですね。

松本井戸めぐり新聞

松本井戸めぐり新聞

松本市・本郷小5年 藤森 由真(ふじもり ゆま)さん

おいしい湧き水 楽しんで

「松本は湧き水がたくさんあることで有名と知り、調べたら面白そうだと思ってテーマにしました。夏休みにお母さんと一緒にガイドマップを見ながら井戸を巡りました。水が一番おいしいと感じた源智の井戸には、おじいさんから若い人までたくさんの人が水をくみに来ていました。場所が分かるように地図を入れ、色の使い方も工夫して見やすくしました。読んだ人にも松本のきれいでおいしい井戸水を楽しんでほしいです」

先生のひとこと

井戸や湧水それぞれに歴史の重みを感じます。今もなお、人々の生活と結びつき、大切にしている様子も伝わってきます。

方言を知ろう つかおう つなげよう新聞

方言を知ろう つかおう つなげよう新聞

飯田市・丸山小5年 鈴木 悠史(すずき はるふみ)さん

同じ意味 いくつも言い方

「『いただきました』が方言だと知って驚き、方言のことを調べました。クラスメートにアンケートを取ると、祖父母は使うけど自分は少ししか使わない、という人が多かったです。本で長野県の方言を調べ、地図にまとめました。『どんどやき』など同じ意味でもいくつも言い方があり、面白かったです。おじいちゃんが『方言を聞くことが減ってさみしい』と話していました。自分でも使うようにして方言をつなげたいです」

先生のひとこと

方言のよさやあたたかさ、何より方言を大事にしたいという思いが伝わってきます。自らが使うことで「つなぐ」こと、すてきですね。

奨励賞

おいしいよ立科の水新聞

おいしいよ立科の水新聞

中谷 優太さん(立科町・立科小2年)

橋北しんぶん

橋北しんぶん

篠原 咲真さん(飯田市・上郷小2年)

みんなで学ぼう 防災新聞

みんなで学ぼう 防災新聞

大井 千愛さん(長野市・川中島小3年)

人工内耳新聞

人工内耳新聞

伊東 綾音さん(長野市・川中島小3年)

オブセ牛乳新聞

オブセ牛乳新聞

髙木 優香さん(小布施町・栗ガ丘小3年)

上田の商店街新聞

上田の商店街新聞

下城 鳳眞さん(上田市・神川小4年)

交通安全新聞

交通安全新聞

池田 紬さん(上田市・南小3年)

井戸水新聞

井戸水新聞

唐澤 龍之進さん(塩尻市・桔梗小4年)

大糸線ちょうさ新聞

大糸線ちょうさ新聞

小原 結衣さん(松本市・島内小3年)

ハチ新聞

ハチ新聞

柴田 和香さん(白馬村・白馬南小4年)

ぼくの徒士町新聞

ぼくの徒士町新聞

谷本 健治さん(松本市・信大附属松本小3年)

くらしにうるおいを うるし新聞

くらしにうるおいを うるし新聞

漆戸 美悠さん(箕輪町・箕輪東小4年)

伊那の石ころ新聞

伊那の石ころ新聞

深瀬 あをさん(伊那市・伊那小4年)

木曽馬守ろう新聞

木曽馬守ろう新聞

酒井 友也さん(豊丘村・豊丘南小3年)

自販機新聞

自販機新聞

大原 未来さん(喬木村・喬木第一小4年)

通信障害新聞

通信障害新聞

林部 ひよりさん(長野市・篠ノ井西小5年)

私にできるSDGs新聞

私にできるSDGs新聞

丸山 楓乃さん(長野市・篠ノ井西小5年)

困っている人がいる 香害新聞

困っている人がいる 香害新聞

関 なつみさん(長野市・古里小5年)

2019私が体験した台風19号新聞

2019私が体験した台風19号新聞

関 小葉音さん(長野市・昭和小6年)

子どもの幸せを考える里親新聞

子どもの幸せを考える里親新聞

塚田 百香さん(長野市・川中島小6年)

戦争について考える新聞

戦争について考える新聞

柳澤 蓮さん(坂城町・村上小6年)

知っておきたい 災害時の食新聞

知っておきたい 災害時の食新聞

綱島 陽也さん(上田市・中塩田小6年)

わたしが住んでいる 木曽の郷土食新聞

わたしが住んでいる 木曽の郷土食新聞

田中 咲羽さん(上松町・上松小6年)

栄養たっぷり新聞

栄養たっぷり新聞

加茂 新菜さん(松本市・波田小5年)

霧ヶ峰新聞~みんなで守ろう~

霧ヶ峰新聞~みんなで守ろう~

河西 秀真さん(諏訪市・中洲5年)

長野県郷土食新聞

長野県郷土食新聞

宮坂 紗悠さん(岡谷市・神明小6年)

釜無ホテイアツモリソウ新聞

釜無ホテイアツモリソウ新聞

山田 眞花さん(富士見町・富士見小6年)

高遠 じまんの!さくら新聞

高遠 じまんの!さくら新聞

藤川 樹乃さん(伊那市・高遠小6年)

人と人の支え合い新聞

人と人の支え合い新聞

松田 想來さん(箕輪町・箕輪中部小5年)

S・H・R 働き方改革新聞

S・H・R 働き方改革新聞

神藤 航さん(飯田市・浜井場小5年)

佳作

審査を終えて

県教委学びの改革支援課指導主事 荒井 和之さん

情報を収集・客観的な考察・自ら考え動く 予測困難な時代を生き抜く力に

 皆さんの魅力あふれる「こども新聞」をワクワクしながら拝見させていただきました。社会的な出来事や身の回りの出来事などから見いだした課題について、調べたり、考えたりしたことを分かりやすく発信したいという強い思いが、どの新聞からも伝わってきました。その根底には、次の三つの力があるのではと考えます。
 一つ目は、「情報を収集する力」です。皆さんの新聞には、本やインターネットを使って得た情報はもちろん、実際にその場所に足を運び、自分の目で見たり、声や音を聴いたり、また、匂いを感じたり、ものに触れたり、食べたりするなどといった五感を使った体験を伴って得た情報が数多くあります。
 現在、多くの情報を瞬時に手に入れることができますが、バーチャルではなくリアルな体験を通じて学ぶことがより重要視されています。五感を使って情報を得ることは、人間だからこそできる強みでもあります。
 二つ目は、「情報を客観的に捉える力」です。自ら集めた情報をもとに考察・分析することで、課題に対する自分の「納得解」を導き出すことはもちろん、そこに客観性が伴うことで読者にとっての「納得解」にも至ります。
 三つ目は、「自ら考え動く力」です。考察・分析したことをもとに「自分ができること」を発信することは、自ら考え動く第一歩でもあります。さらに、自分以外の人や生物、環境、AIなどと「共に生きる」ために他者意識を持ち合わせた考えができることは素晴らしいことです。
 これらの力は、予測困難な時代を生き抜くためにも大きな力となることでしょう。新聞づくりで身につけた力を日常の生活においても活用しつつ、自己を高めていってほしいと願っています。