2020.12.04

ラッパーと言えなくて 印象悪い? 俺はいい奴

 職業を尋ねられ

「ラッパーです」

と答えると

「チェケラッチョか!」

と、酒に酔ったおっさんはお笑い芸人がコントでするような、ザ・ラッパーの身ぶりをしてちゃかしてみせた。

 誰も面白いとは思っていないが、一応その場にお付き合いの笑い声が響く。

 一方、バカにされたと認識した俺は、おっさんの髪の毛を掴んで地面に叩き付ける。...なんてことをしなかったのは腕っぷしがカラッキシなのと、同席した友達が

「そういう形だけじゃないんですよ、一度聴いてみてください」

と笑顔でありながらも、語気を強めて言ってくれたから(いい奴め。泣きそうになっちゃった)。

 そして何よりおっさんのことを一方的に責めるわけにはいかない過去がある。

 初めて彼女の親父さんに会った時のこと。

「君はどんな仕事をしてるのかな」

と聞かれ

「ラ、ラッ...詩人です」

と答えたあの場面。

 60オーバーの親父さんに娘の彼氏の職業が「ラッパー」、それは刺激が強すぎる、俺なら発狂する。

 そう判断し、老若男女に認知され、知的好感度の高い谷川俊太郎さんの背中に隠れる形となった。

 広い意味では噓ではない。

 とはいえ、自分自身がこのありさまではおっさんに憤る資格などない。

 うーむ、ラッパー、ラッパーか。なんでイメージ悪いんだろう。

 あっぱらぱー、という言葉と響きの親和性があるのも良くない。

 実際はラップ特有の文量の多い歌詞を書き、ライブするとなれば全部暗記しなきゃいけないわけで。

「ブツブツ...ブツブツ...あーなんだっけ、だめだ、全然覚えらんない。どうしよ、ライブもう来週なのに」

なんて呟きながら途方に暮れる姿を思えば「真面目に働くなんて馬鹿らしい!」と、どんなに歌詞で悪ぶってみても、その姿は真面目そのものだ。

 職業であれ、性別であれ、人が持つ肩書に印象はつきもの。実際は一人一人に違う哲学、人生があるにもかかわらず、大体こうだろうと型にはめて会話のテーブルへあげる。それが理解の最短距離のように勘違いをしてしまう。

 そんな思考こそが最も理解からかけ離れているにもかかわらず。

 ラッパーの中にはわるそうに見えて、真面目でいい奴もいる。わるそうに見えて、見た目以上にわるい奴もいる。

 ちなみに俺はいい奴です。ただし、自分でいい奴っていう奴は大体がわるい奴です。

 どっちなんだよ!ってなった人にわかってもらえるように、おっさんにも親父さんにも届くように、ラッパーのアフロは今日も曲を書きます。

【写真説明】11月、東京都内にて

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