彼女が元カレと電話 俺は隣の部屋で...トホホ
同棲している彼女の元に前の彼氏から電話があった、らしい。
俺はそれを4日後に知った。情報源は久しぶりに開いたTwitter。
彼女のアカウントで
「さっき元カレから電話きて、久しぶり話をした」
と、書き込まれていたのだ。
日付は4日前、時間は午前1時半過ぎ。
心がザワつく。何故なら午前1時台は男にとって
「なーんかムラッとするなぁ、ワンチャン狙って電話しちゃお!」
の時間帯だと認識している。
(これは恥ずかしながら自らの経験によるもの)
何よりこの内容をSNSに投稿してしまう彼女にも悲しくなった。
電話自体を咎めることはないけれど、Twitterに書くということは、いずれ俺がそれを見る可能性も織り込み済みのはずだ。俺が見たらどんな気持ちになるか、想像してほしかった。せめて直接聞きたかった。
ひとしきりしょんぼりしたその後に、ふと考える。
4日前のその時間、俺は一体何をしていたんだろう。
スマホを開き、スケジュールやLINEの履歴を遡る。
そこから前後の行動を探り当時の自分をあぶり出す。その姿は名探偵さながら。
捜査開始から30分、次第に記録と記憶が結び付く。
間違いない。俺はその時に家にいた。電話する彼女のすぐ隣の部屋だ。
何をしていた?
寝てた?
いや、違う、この時間はたしか...
ついに、俺の中で点と線が繋がった。
そうだ、あの日あの時、俺は、俺は
ウォーリーを探していた。
人混みに紛れる赤と白の服を着たアイツを。楳図かずおと同じセンスのアイツを。愛しい彼女が隣の部屋で元カレと話している間、俺は!ウォーリーを探していたのだ!
ウォーリーを探し終えたその後は、目を皿にして彼の落とし物を探すのだ。
「もう!ウォーリー!メガネもカメラもちゃんとリュックに入れとかなきゃだめじゃんよ~」
などと呟きながら赤ペンを握りしめていたのだ。
まったくもって情けねえ。
せめてラッパーとして歌詞を書いていたかった。それであればなんか、絵になるというか、哀愁があるというか。
「どんな時も仕事がそばにいてくれた!」
みたいなストイックな一節が生まれたはず。現実はなんともトホホな名探偵。
ただそんな自分の滑稽さを笑うことはできる。
すると、まぁいいか、なんて思えたりした。
【写真説明】群馬・東吾妻にて=3月
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