信大、男性患者に肝移植 開始から12時間後に終了



信大病院で行った国内初の脳死肝移植手術=モニター画面から信大医学部撮影

 信大病院(小宮山淳病院長)=松本市旭一=は二十八日、高知市の高知赤十字病院で脳死した四十歳代の臓器提供者から肝臓を摘出、同日午後八時すぎ、肝臓を持ち帰った。搬送と並行して、第一外科を中心とするチームが、県内在住の男性(43)の手術を始めた。手術は順調で一日午前一時前に、主な血管の接合が終わり、血流の再開を確認。ヤマ場を越えた。

 移植手術を受けた男性は、「家族性アミロイド・ポリニューロパチー(FAP)」を患い、移植以外に助かる道はなかった。

 信大病院は同日朝、日本臓器移植ネットワーク(事務局・東京都港区虎ノ門)から、肝臓を信大病院で待機する患者に配分する―との連絡を受けた。待機患者とのインフォームド・コンセント(説明と同意)を確認するとともに、午前十時二十分すぎに臓器摘出、搬送のためスタッフが高知市に向けて出発。摘出手術後、空路、肝臓を搬送した。

 国内ではこれまで八百例を超す生体部分肝移植が実施され、信大だけで百例に達しているが、脳死者からの肝移植は初めて。九七年十月の臓器移植法施行以来、日本臓器移植ネットワークには信大と京大の二移植指定施設を通じ移植希望患者の登録があり、二十八日現在、肝移植の登録患者は三十二人。信大の患者は、容体や病歴、臓器提供者との血液型の一致などを考慮して選ばれたとみられる。

 信州大医学部(長野県松本市)の第一外科移植チーム(川崎誠治教授)は二月二十八日夜、高知市の高知赤十字病院で脳死した四十歳代の提供者から摘出した肝臓を、長野県在住で厚生省指定の難病「アミロイド・ポリ・ニューロパシー」(FAP)の四十三歳の男性患者に移植する手術を実施した。手術は順調に進み、開始から約十二時間後の一日午前五時十六分、無事終わった。移植チームによると、患者の容体は安定しているという。

 患者はオーストラリアで脳死移植を受けるため、同病院に検査入院中。二回にわたって脳死肝移植についてのインフォームドコンセント(十分な説明と同意)が行われ、患者本人が文書で同意した。

 摘出チームは二十八日午前、長野県の消防防災ヘリコプターで出発、名古屋空港で民間のチャーター機に乗り換え、高知に到着した。高知赤十字病院で肝臓摘出後、松本空港に戻り、午後八時すぎパトカーの先導で帰着した。第一外科側は、摘出チーム側からの連絡を受け、午後五時には患者の開腹手術に着手した。

 手術には東大の幕内雅敏教授が加わり、脳死肝移植施設に指定されている京大の田中紘一教授も立ち会った。(共同)

(1999年3月1日 信濃毎日新聞掲載)