若い力へリレー 元五輪選手、白馬を走る


 五輪への熱き思いを託して―。長野五輪の聖火リレーが二十三日午後、初めて五輪会場地の北安曇郡白馬村に入った。西日本・日本海ルートの聖火を受け継いだのは、村内の元五輪選手たち。かつて自らの青春をかけた五輪への思いやスキーを愛する心、そして平和への願いを若者たちに伝えようと、聖火を運んだ。

 白馬村に入った聖火は、村内を八区間に分け、計四十八人が走った。午後四時前、元巨人軍投手で野球解説者の宮本和知さんから、滑降、ジャンプ会場となる八方尾根を望む第七区へ。メンバーは六人。一九五二年のオスロ大会でノルディック複合に出場した藤沢良一さん(70)を聖火保持者に、六八年グルノーブル大会の丸山仁也さん(55)、美保子さん(52)夫妻、九二年アルベールビル大会の永井祐二さん(34)―という村内の元五輪選手四人と、スキー競技を続ける高校生の“ドリームチーム”だ。

 住民約三百人に見守られて八方地区を出発した聖火は、JR白馬駅への県道を下る。沿道の人の列が切れた辺りで、藤沢さんが「ジャンパー、次だぞ」。右後方を走る白馬高一年、田中麻依子さん(16)に声をかけ、右手でかざしていた聖火を両手で持ち、丁寧に手渡した。

 田中さんは村内唯一の高校生女性ジャンパー。その若々しい姿を見ながら、藤沢さんの頭に、五輪で訪れた四十六年前のオスロの風景が浮かんだ。郊外のあちこちにクロスカントリーコースがあり、スキーを楽しむ住民の姿が絶えない。ジャンプ台に挑む女性を何人も見かけた。

 「こんな風景が将来は日本でも」―。当時、若き日に心に描いた思いを、今ようやく白馬で実現できたと思う。

(1998年1月24日 信濃毎日新聞掲載)