末恐ろしい21歳 距離女子30キロ金のチェパロワ



 女子30キロフリーでベルモンドとの接戦を続けていたにもかかわらず、既に残り5キロで勝利を確信していた。スタジアムの周回に戻り、最後の1周に向かう時だ。観客席の一角に陣取ったロシア選手団に向かって、右手の指一本を軽く突き出した。

 一九七二年札幌大会のソ連(当時)以来となる、ロシアの女子全種目制覇の最後を締めくくったのは二十一歳の新星チェパロワ。万歳しながらフィニッシュすると、両手で顔を覆い、「金メダルを夢見ていた」と感涙をぬぐった。

 これがロシア女子距離陣の底力としか言いようがない。一九九四年から世界ジュニア選手権15キロフリーで三連覇したホープだが、ワールドカップ(W杯)は昨季まで6位が最高。昨年の世界選手権にも出ていない。ところが、今年一月四日のW杯10キロフリーで初勝利を飾り、五輪代表に滑り込んだ。

 フリー走法が得意。チーム五番手の選手で、ビャルベの風邪による欠場のため距離複合に出場しただけ。距離複合で6位に入ったが、リレーメンバーには選ばれなかった。

 これが、負けん気に火をつけた。「あれが、とても悔しかった。だから、このレースはとにかく一生懸命走ろうと思った」。前夜はあれこれ組み立てを考えて、なかなか眠れなかったという。

 シベリアのハバロフスクから約三百キロ北北東のコムソモリスクナアムーレ生まれ。ロシア・ジュニア代表のコーチも務めた父アナトリーさんの手ほどきで頭角を現し、初の五輪で金メダル。今後どんなキャリアを積み上げるのか、将来が末恐ろしくもある。

(1998年2月20日 信濃毎日新聞掲載・共同)