7分の壁もニーマンの壁も破った 女子五千のペヒシュタイン


 1組前に滑った女王ニーマン・シュティルネマンが、7分の壁を破っていた。それまでの世界記録を3秒61上回るタイム。ペヒシュタインが五輪連覇を果たすためには、自己ベストを15秒近く上回らなければならなくなった。

 1000メートルの通過では、0秒96遅れたが、ここからラップタイムをじりじりと上げていく。3400メートルまでの中盤に、1周32秒台を3度刻んだ。ライバルは1400メートル以降はすべて33秒台。残り1周となったところで、逆に0秒70のリードを奪った。

 それでも、ここで勝負がついたわけではなかった。最後の1周は疲労でしびれる自分の体との闘い。足のけりが流れ、体が左右にぶれる。ペースが大きく落ちたのは、だれの目にも明らかだった。

 ベンチに腰をかけて見つめていたニーマン・シュティルネマンが跳び上がったが、ペヒシュタインが0秒04差で勝った。三十一歳の女王は、苦笑いで「どうしようもないわ」と両手を広げてみせるしかなかった。

 厳しさで知られるベルリンのフランケ・コーチからは「練習量が足りない」と指摘されていた。「そんなことはない。タイムはぐんぐん伸びているでしょう」と反論した。二人の議論は、五輪直前まで白熱した。

 コーチとの対立も、今では金メダルを手にするための途中経過だったのだと笑い飛ばせる。世界記録ラッシュに沸いたエムウエーブ。競技を閉じるにふさわしい、スリリングな対決だった。

(1998年2月21日 信濃毎日新聞掲載・共同)