完全燃焼、上原11位 スピード女子五千



 上原が五輪最後のレースで求めたものは、記録や順位ではない。自分の力を出し切ることだけだった。レース後は自分の体を支えきれず、リンク内に倒れ込んだ。苦しさの中に「やっと自分らしいレースができた」という満足感があった。

 200メートルからの1周が32秒8。オーバーペースだったが、自分の感覚を信じた。落ち着いてしっかり氷を捕らえ、中盤はリズムに乗って34秒台のラップを刻んだ。

 日本記録の7分18秒63(カルテットスタート)は、まだスラップスケート旋風が起きる二シーズン前のワールドカップ(W杯)最終戦でマーク。日本女子長距離で初のW杯優勝を果たした時だ。その記録を上回るペースで滑っていた。

 後半は徐々にペースが落ち、11位。しかし、終盤で滑りが乱れて急にペースが落ちる今季の悪いパターンではなかった。

 スラップスケートに悩み、不本意なレースに終わった十六日の千五百メートルで「あれほど悔しい事はなかった。もう立ち直れないんじゃないかと思った」という。だが、過去に何度も苦しい場面を乗り越えてきた二十六歳は、気持ちを切り替えた。

 「五輪はこれが最後」と上原。まだ今シーズンは残っている。取材を受けた後、再びリンクへ向かった。世界記録の金メダル争いが繰り広げられた興奮の中で、もう一度自分のフォームを確認しながら滑った。

(1998年2月21日 信濃毎日新聞掲載)