ノルディック複合 富井ら見せ場「挑戦を買ってやりたい」


 富井彦が2位に上がった。降りしきる雨の中、大型画面に見入る大観衆から歓声があがった。飛ばし過ぎの反動で後半に苦しむ富井。今度は画面に向かって「富井頑張れ」「負けるな富井」のゲキが飛んだ。

 リレハンメルの金メダルチームから阿部雅司、河野孝典が抜けた。それからは、荻原健司だけが注目され、弧軍奮闘で引っ張った。だが、五輪では新顔の三人が主役で見せ場をつくった。健司一人のチームではなかった。

 荻原次晴が落ち着いた走りで二つ順位を上げると、森敏が「ツンさん(次晴)のいい走りをつなげよう」と、気合を引き継いだ。オーストリアとの競り合いを制し、前を行くフィンランドに迫る。メダル圏内だ。

 一番若い富井も手と脚がバランスよく回転。上り坂で、とうとう2番手に出た。「フィンランドに食いつくつもりが、フィンランドがどいて(よけて)しまった」のだという。後ろからもフランスが迫っていた。「けん制し合っても仕方ない。行くしかない」。ライバルを引っ張るように集団の先頭を突っ走った。

 反動はあまりにも大きかった。「ラスト1キロは体がまったく動かなかった。意識がもうろうとして、早くつなごうと気力だけだった」。6位に落ち、メダルの夢が遠のくタイム差がついた。

 レース後、富井は泣きじゃくった。落ち着きを取り戻した後、「今考えると、気持ちが先行したと思う。今後の試合につながるようにしたい」と反省を込めて振り返った。

 だが、上杉監督は責めるどころか「頭の中は、とにかく前に行こうだけだったと思う。上りであれだけ一気に追った。酸欠状態だったでしょう」とかばい、「彦がキーポイントになっちゃうけど、前向きにやった。今後につながる。世界の舞台で限界を超えて挑戦したのを買ってやりたい」と評価した。

 若手の奮闘を受け、アンカーの荻原健は「メダルのチャンスがあるかもしれない。一つでも順位を上げてゴールするしかない」と力走。「応援してくれた一人ひとりに感謝したい。たくさんの人たちに見てもらいすごく幸せを感じている」と話した。斉藤ヘッドコーチは「二週間前に集まった六人。この六人で、よくここまでやったなと思う。試合の後で『おめでとう』『感動をありがとう』と言ってもらい、我々の力で感動を与えられたんだなと、うれしかった」と締めくくった。

(1998年2月21日 信濃毎日新聞掲載)