手作り花火・大獅子…閉会式は信州の祭り華やかに




 「さよなら、ナガノ」「ありがとう、ナガノ」−。第十八回冬季五輪長野大会の閉会式は二十二日、長野市の南長野運動公園で行い、七十二の国・地域から二千三百人余が集い、十六日間にわたって繰り広げた祭典に幕を閉じた。

 スタジアムは、世界中から集まった五万人の観衆であふれんばかり。各国の選手が入場すると、夜空をつんざくような拍手。感動のドラマを与えてくれた選手たち。伊那谷の獅子舞をはじめ、信州の各地に伝わる素朴な祭りが、一人ひとりを笛や太鼓でねぎらった。

 五輪旗が次期開催都市のソルトレークシティに手渡され、同市のスタッフが次期大会をアピール。サマランチIOC会長の閉会宣言に続き、五輪旗が退場すると、十六日間赤々と燃え続けた聖火が火を落とした。

 やがて、しんとした会場に、歌手の杏里が歌う「故郷(ふるさと)」の歌声。「夢は今もめぐりて 忘れがたき故郷…」。長野市児童合唱団も歌に加わり、スタジアムを埋め尽くした観衆が、一斉に提灯をともし、クライマックスに。

 最後は、一転、軽快な「WAになっておどろう」の歌と演奏。勝者も敗者も、女も男も、子どももお年寄りも、歌い、踊り、「ふるさと・ナガノ」で一つになった。


 県内の小さな地域で、数百年も受け継がれているさまざまな祭りが二十二日の閉会式に登場する。人々の協力と実りを祈る気持ちで継承されてきた祭りだからこそ、平和と豊かさの大切さを訴える力がある。色とりどりの幟(のぼり)が立ち上がり、力強い太鼓の音が響き、獅子が舞い、花火がイベントを彩る…。大会を支えた大勢の人たちへのねぎらいの心も込めて。

<上田・岳の幟>華やかな雨ごい神事

 毎年七月十五日前後の日曜日、上田市別所温泉地区で行われている雨ごいの神事。降雨量の少なさは全国有数で、そんな風土を反映した祭りだ。

 室町時代に始まったといわれ、深刻な干ばつに見舞われ苦しんだ人たちが夫神岳に登り、山頂に祭ってある神様にお祈りしたところ雨に恵まれ、お礼に幟を供えたのが始まりといわれる。

 当日は夜明け前に大勢の人が青竹と色とりどりの反物を持って夫神岳に登る。途中、青竹を置いて反物だけ持って登り、日の出を待って反物を供えて神事を行う。下山途中で青竹の先に反物を結んで、華やかな幟にして里に下る。一行は出迎えの太鼓や笛、獅子(しし)、ささら踊りの子供たちと合流する。ささらは竹を細く切り裂いたもので、これで木の棒をこすって音を出す。

 地区内では獅子舞や女児がそろいの花がさと浴衣、黄色の手甲をつけた姿で、ささらを鳴らしながら踊る。各地にある雨ごい行事の中でも、規模が大きく素朴で華やかな伝統行事。

<伊那谷の獅子舞>珍しい屋台獅子

 獅子舞の盛んな飯田下伊那地方を代表するのが、下伊那郡高森町の「瑠璃寺の獅子舞」、飯田市の「東野の大獅子」、「上殿岡の獅子舞」、「羽場の獅子舞」。この地方の獅子舞の特徴は、獅子を操る人と、笛や太鼓のおはやしが、一つの大きなほろに入って舞う屋台獅子で、全国的にも珍しい形といわれる。

 瑠璃寺の獅子舞は、約九百年前に始まったとされ、屋台獅子の原型という。屋台は、組み立て式の台車にほろが張られて長さ約七メートルになる。赤い装束を身にまとった獅子使いの宇天王(うでんのう)が、警護役の男鬼、女鬼、道化役でもある猿を露払いに、舞いながら眠っている獅子を起こし、手なずける。宇天王や獅子の舞が優雅なのが特徴だ。

 一方、東野の大獅子は、けた外れの大きさで周囲を圧倒する。重さが約三十キロの獅子頭を十二、三人が交代で演じる。長さ二十五メートルの屋台の中には笛や太鼓約五十人が入る。大獅子は七年ごとに開かれる「飯田お練り祭り」で披露されており、今年はそのお練りの年だ。

<田立の花馬祭り>五色の花、稲穂を表現

 木曽郡南木曽町の田立地区にある五宮神社に約二百八十年続く、五穀豊じょうを祈る祭り。毎年十月三日に行われる。三頭の花馬と笛や太鼓のグループが行列をつくって地区内を練り歩く。最後に神社に到着すると、境内を三回回る。

 花馬とは、五色の色紙でつくった花を細く割いた竹に結び、一つのくらに三百六十五本の竹を豪華に飾り付けた馬をいう。華やかでゆったりとした形は稲穂を表している。

 境内を回り終わると、観客はどっと押し寄せて花馬の花をわれ先にとむしり取る。むしり取った花を自宅の入り口に飾れば厄よけになり、田んぼのあぜに立てれば害虫よけになるといわれている。

<清内路の手作り花火>クライマックス「大三国」

 下伊那郡清内路村に二百六十年以上続いている手作りの仕掛け花火のお祭り。火薬の製造技術は江戸時代に、村人が行商で訪れた三河の国(愛知県東部)で教えられたとされる。現在は上清内路煙火同志会と下清内路煙火有志会の二つの保存会の人たちが、毎年十月六日と八日、それぞれの地区の神社に奉納している。

 手作り花火の祭りは全国に多いが、実際に硝石や硫黄、炭などをすり合わせる火薬作りから行っているのは極めて珍しい。

 祭りは、綱火と呼ぶロケット花火がワイヤーをつたって、「花傘」「火車」「大噴水」などの伝統の出し物に点火される。クライマックスが「大三国」。高さ約十メートルの柱の上に置かれた仕掛け花火から、滝のように火の粉が飛び出し、地上に落ちる手前でパッとはじけて無数の火花になる。

 その火花の中、保存会のメンバー数十人が「オイサー、オイサー」のかけ声とともに肩を組んで大地を踏みならす。それがシルエットになって浮かぶ。

(1998年2月22日 掲載)