第17回スクラップ新聞コンクール(信濃毎日新聞社と信毎販売店会主催)は県内の小中学校49校から398点の応募がありました。新聞で気になった記事を集め、深まった自分の考えを大見出しにして発信しています。差別や人権、自然災害、戦争など現代社会が直面する問題に向き合ったり、地元の食文化や祭りで盛り上がる街などに注目したり、作品のテーマは幅広く集まりました。審査の結果、大見出しやレイアウトなどの工夫で特に強く思いが伝わってきた優秀賞14点、奨励賞16点が決まりました。
(受賞者の名前の前にある市町村名は学校の所在地です)

中学生の部

優秀賞

My situation 人権の問題に直面している人々の声

My situation 人権の問題に直面している人々の声

佐久市・佐久長聖中2年 森田 結香 さん

「新聞などでジェンダーや性被害など人権問題について目にすることが多く、テーマにしました。ジェンダー平等では女性の活躍をまとめました。小学3~6年生の時に選挙管理委員会として学校の選挙に関わる中で、立候補者が男子ばかりなのが気になっていました。社会でも女性を起用することで良くなることがあると思います。身近なところに人権の問題があることを知ってもらい、考えるきっかけになってほしいです」

今の勉強大丈夫?

今の勉強大丈夫?

佐久市・佐久長聖中2年 浦野 佑菜 さん

「『今の勉強大丈夫?』は自分への投げかけでもあります。成績が落ち、勉強方法に不安を持ち始めていました。学力テストの結果分析やAI(人工知能)の記事を『今鍛えるべき力とは!?』などのテーマで整理しました。保育園の時、お医者さんが優しい対応で安心させてくれ、こんな気持ちにするのはすごいと思いました。私も医師になるために勉強し、いい成績も取りたい。『考える力』が大切なんだと再認識できました」

作る・創る・伝える3つの「つ」でつながれ!信州産食材で広がれ!!人々の輪

作る・創る・伝える3つの「つ」でつながれ!信州産食材で広がれ!!人々の輪

千曲市・屋代高附属中1年 竹村 友希 さん

「総合の授業で千曲市の特産のアンズと古代米を使って商品作りをしていることもあり、地産地消や商品開発に興味を持ちました。関係する新聞記事をたくさん集めた後、『作る』『創る』『伝える』の三つに色を付けて分けて、分かりやすいようにまとめました。たくさんの人が商品開発やそのために食材の魅力を伝える活動をしていると分かりました。県の魅力を県外だけじゃなく、世界に発信したいと思いました」

ウェルビーイングで地域課題をがっちりNewビジネスに!

ウェルビーイングで地域課題をがっちりNewビジネスに!

長野市・信大附属長野中1年 太田 晴希 さん

「小学5年生の時、飼っていたカブトムシが増えすぎたので長野市内の道の駅で販売したところ、親子連れら多くの人が喜んでくれました。これを機に起業家になりたいと思い、廃校の後利用や増加する空き家の活用といった地域の課題解決もビジネスとして成り立つのか調べ始めました。空き家でカフェを開くなどさまざまなアイデアに触れ、お金が稼げるかも重要ですが、多くの人を喜ばせられるかが大事だと思いました」

共存の道

共存の道

長野市・長野日大中3年 相原 柚希 さん

「小学校の頃から、人間の経済活動などの影響で動物の生存が脅かされている現状に問題意識がありました。新聞では、環境省が指定する絶滅危惧種について、ゲノム(全遺伝情報)解読が進んでいない現状などを紹介。気候変動が魚類の生息域や捕獲数に与える影響、行政や企業による温室効果ガス排出削減の取り組みをまとめました。人間による環境破壊などに問題意識を持ち、動物と共存する道を今後も考え続けたいです」

問題山積みこども家庭庁 解決できるのか

問題山積みこども家庭庁 解決できるのか

松本市・山辺中2年 藤澤 花純 さん

「4週間に1度くらい、気になった話題をまとめて新聞で読んでいます。国が子どものために動いているという記事が目に留まり、こども家庭庁が何をしているのか興味を持ちました。子どもが国に意見を伝える仕組みがあると知り驚きました。ただ、知らない人が多いので、子どももニュースに関心を持つ必要があると思います。上に国の動き、下に虐待などの状況を分け、幅広いテーマが見やすくなるように工夫しました」

自然災害に勝つ!!

自然災害に勝つ!!

原村・原中2年 宮坂 想乃 さん / 藤森 彩加 さん

「御嶽山の記事で、まだ見つかっていない被災者がいることを知って衝撃を受けました。災害の記憶は時間がたてば薄れてしまうので、文字として残すことと、それを読むことが大事だと思いました」と宮坂さん。藤森さんは「台風19号や御嶽山噴火など県内でも大きな災害が起きていたので、過去の災害やその後の対策を取り上げた記事をまとめました。ひとごとではなく、身近な問題として学ぶことが大切だと感じました」

中学生の部

奨励賞

少子化が止まらない!!どうする日本

少子化が止まらない!!どうする日本

西澤 唯花 さん(佐久市・佐久長聖中1年)

どうする!?処理水問題

どうする!?処理水問題

長谷川 美空 さん(佐久市・佐久長聖中2年)

守ろう!!未来の地球

守ろう!!未来の地球

岸本 あずさ さん(千曲市・屋代高附属中1年)

AIの開発は促進と規制のバランスが重要だ!!

AIの開発は促進と規制のバランスが重要だ!!

春日 優奈 さん(千曲市・屋代高附属中1年)

同性婚の法制化を!LGBTQ+問題の今

同性婚の法制化を!LGBTQ+問題の今

田中 杏奈 さん(千曲市・屋代高附属中1年)

知ってほしい!地元の歴史

知ってほしい!地元の歴史

中嶋 仁胡 さん(長野市・長野清泉女学院中1年) 

水を読む~水に関する恩恵、危険そして問題~

水を読む~水に関する恩恵、危険そして問題~

井上 花子 さん(松本市・松本秀峰中等教育学校3年)

NO MOREヒロシマ~日本から世界中に伝えたいこと~

NO MOREヒロシマ~日本から世界中に伝えたいこと~

平瀬 優衣 さん(松本市・松本秀峰中等教育学校3年)

問題山積み!!マイナンバーカード

問題山積み!!マイナンバーカード

梅原 愛佳 さん(松本市・松本秀峰中等教育学校3年) 

みんなで守ろう子どもの未来 命・人権・生活

みんなで守ろう子どもの未来 命・人権・生活

鈴木 咲智 さん(飯田市・飯田西中2年)

小学生の部

優秀賞

「AI」でどうなる?わたしたちのくらし

「AI」でどうなる?わたしたちのくらし

上田市・西小5年 千野 色華 さん

「ニュースでチャットGPTについて知り、AI(人工知能)にどんなことができるか気になって調べました。AIの活用方法や問題点など、テーマごとに記事をまとめることで読みやすくしました。AIは一度作ったら完成じゃなくて、手順を覚えたりして成長することにびっくりしました。いろいろな職業をAIがやるようになると、人間の仕事がなくなるかもしれないので、AIと協力して仕事ができたらいいと思いました」

差別のない世界へ~Get to know LGBTQ~

差別のない世界へ~Get to know LGBTQ~

長野市・篠ノ井西小6年 山岸 瑞季 さん

「2年前、学校で1年生がかぶる帽子が男女で同じ形に統一され、ジェンダーレスに関心を持ちました。11人に1人が性的少数者(LGBTQ)だという記事を読み、クラスにも生きづらさを抱える人がいるかもしれないと気づき、問題が身近になりました。近くに当事者がいた場合、性的指向を勝手に広めないことも大事だそうです。多様さを受け入れ互いに配慮ができれば、学校や社会生活はより良くなるはずです」

3.11は続いてる~まだ終わらない処理水の闇~

3.11は続いてる~まだ終わらない処理水の闇~

長野市・山王小6年 村田 柚月 さん / 依田 絆那 さん

「東京電力福島第1原発の処理水海洋放出のニュースがよく出ていたので、このテーマを思いつきました。感想を入れたり、レイアウトを工夫したりして、読みやすくするのに苦労しました」と依田さん。村田さんは「ちょうど同じテーマだったので、一緒にやろう!となりました。関係する記事が多くて、整理して見せるのが大変でした。この新聞を作り終えて、『処理水を流す以外に解決方法はないのかな』と思いました」

長野県で天文学を学ぼう!!

長野県で天文学を学ぼう!!

松本市・開智小5年 財部 凌 さん

「小学1年生の時にプラネタリウムに行き、(星空など)天文学に興味があって講演会なども聞きに行っています。新聞には天文に関するいろいろな記事がありました。長野県に天文台がたくさんあり、イベントや講演会がたくさん行われているからだと思います。記事をうまく入れるのにレイアウトを工夫しました。宇宙には分からないことがたくさんある。多くの人が天文学に興味を持ち、研究が盛んになってほしいです」

4年ぶりの通常開催 戻って来た祭の熱気

4年ぶりの通常開催 戻って来た祭の熱気

佐久市・臼田小4年 髙橋 ひろの さん

「新聞を読んだら、祭りの記事が楽しそうでテーマに選びました。記事ごとに内容をまとめたり、空いた場所に花火の絵を描いたりして工夫しました。4年前より参加者が減っちゃった祭りがあったのは少し悲しかったけど、みんなで楽しもうと動画で祭りの踊りを解説するところがあっていいなと思いました。今回こんなにいろいろな祭りがあると分かり、私は特に長野びんずるや松本ぼんぼんに行ってみたくなりました」

沖縄旅行で台風6号にであう

沖縄旅行で台風6号にであう

白馬村・白馬南小4年 ケリー 紬 ソフィア さん

「夏休み中の沖縄旅行で台風6号が直撃しました。ホテルが停電して非常用電源を使ったり、強風で外に出られなかったりして大変でした。長野県ではどんなニュースになっているのか気になり、10日分ほどの信毎を一枚一枚めくって台風6号の記事を探しました。あまり記事が載ってなく、長野県は台風6号の影響が少ないから記事も少ないのかなと思いました。これからも気になる記事を切り抜いて友達に紹介したいです」

日本語のゆたかな表現オノマトペ

日本語のゆたかな表現オノマトペ

伊那市・伊那小2年 渡邉 和 さん

「新聞を読むようになり、漢字が多くて難しいです。でもオノマトペ(擬音語、擬態語)は読めたので、毎日宝探しのように楽しく探しました。調べてみると、ドアをたたく音もいろいろあって面白いと思いました。好きなオノマトペは、リンゴの記事で、添えられた写真にぴったりだった『シャキシャキ』です。大きく切り抜いて作品に貼り付けた『ピタッ』も好き。オノマトペ以外も読めるように、漢字を勉強したいです」

小学生の部

奨励賞

ぼくたちの寿命をもっと延ばそうよ!!

ぼくたちの寿命をもっと延ばそうよ!!

赤池 大和 さん(長野市・青木島小5年)

暑い夏はさらに加速 気候変動に備えよ!!

暑い夏はさらに加速 気候変動に備えよ!!

相沢 陽葵 さん(長野市・青木島小5年)

捨てるをHELAS

捨てるをHELAS

鷹野 碧音 さん(佐久市・臼田小4年)

長野県の食「魅力」・「発信」

長野県の食「魅力」・「発信」

塩沢 るな さん(飯田市・丸山小4年)

NO WAR 世界の平和を考える

NO WAR 世界の平和を考える

尾地 悠進 さん(高森町・高森北小4年)

長野県のおまつりいっぱい

長野県のおまつりいっぱい

山﨑 湊介 さん(上田市・塩尻小2年)

社会の変化捉え 思い発信

信濃毎日新聞社NIEアドバイザー・元長野市立清野小学校校長 岡本 力さん

 今の社会には地球環境の変化や自然災害、科学技術の進歩、自分らしい生き方など、私たちはどう考え 、行動すべきか判断が必要な問題がたくさんあります。今回も、新聞記事から小中学生が社会を捉え、課題を明確にして考えや思いを発信する スクラップ新聞が集まりました。
 小学生の部では、自分の興味・関心を前面に据えた作品が目立ちました。人工知能(AI)やLGBTQといった社会的テーマに迫ったり、 オノマトペ探しや沖縄の台風体験などにこだわったりしています。祭りの記事を集めたスクラップ新聞は久しぶりにコロナ前の生活に戻ったような 喜びを表現しました。
 中学生の部では、自然環境や災害、人権、こども家庭庁などについて、多角的に考察しています。解決するためにどうすべきか、 考えた道筋が大見出しやレイアウトから伝わってきました。信州産食材の広がりや地域課題を解決する起業、学力や教育のデジタル活用を考えた作品 などの独自の視点には感心しました。
 毎日、多くの記事を載せる新聞からは社会の変化が分かります。スクラップ新聞は集めた多くの記事を取捨選択・分類し、再構成して作ります。そうした 分だけ、新しい見方・考え方に気付くことができます。小中学生には社会への興味や関心を持って、より良い在り方を考え、創造していく力を伸ばしていってほしいと願っています。