第15回 中学生新聞スクラップ作品コンクール

探究心が視野を広げる

 第15回スクラップ新聞コンクール(信濃毎日新聞社と信毎販売店会主催)には、県内の小中学校60校から804点の応募がありました。新聞から気になった記事をスクラップし、それぞれ一つのテーマで考えた社会への思いやメッセージを表現した作品です。
 テーマは新型コロナウイルス感染拡大で学校行事の変更や臨時休校の影響を受けた当事者として、東京五輪や働き方、生活などを考えた作品が多く寄せられました。自然災害や地球温暖化、人権問題といった課題に広い視点で取り組んだ作品もあります。自分にできることや提案を大見出しや分類した記事を配置して分かりやすく伝えようとしています。
 13日に優秀賞の表彰式が長野市の信濃毎日新聞社で開かれたのに合わせて、優秀賞などを紹介します。
(受賞者の名前の前にある市町村名は学校の所在地です)
   ◇
 「岡本さんのひとこと」は、信濃毎日新聞社の岡本力・NIEアドバイザーが担当しました。

中学生の部

優秀賞

タリバン再来!!どうなるアフガニスタン?!

佐久市・佐久長聖中2年 原 海渡さん

状況複雑、イスラム教も関係

「インドネシア人の父が信じるイスラム教に興味がありました。アフガニスタンのタリバンのニュースを見ていると、父がイスラム教が関係していると教えてくれました。父の話を聞きながら新聞で調べると、タリバンは教えを厳しく解釈し、それに縛られすぎていると感じました。写真を多く使い、各国の動きを整理して複雑な状況を分かりやすくしました。タリバンは多くの人の命も奪っています。早く平和になってほしい」

岡本さんのひとこと

タリバンやアメリカ、日本など五つの視点で分類、問題を考えました。どの国も多民族、多宗教が共存する国造りを目指すべきと訴えています。

ハンセン病患者への差別に学ぶ新型コロナ拡大に生かすこと

ハンセン病患者への差別に学ぶ新型コロナ拡大に生かすこと

長野市・若穂中1年 涌井 万優花さん

過ちを繰り返さないために

「小学5年生のころ、当時の担任教諭からハンセン病患者が受けた差別の歴史を学んだのをきっかけに、関連記事のスクラップを始めました。昨年から新型コロナウイルス感染症が広がる中で感染者への偏見や中傷が問題になり、過ちを繰り返さないためにも歴史を学び、生かしてほしいと願って作りました。差別をなくすには一人一人が意識を変えることが大切で、差別する人がいたらみんなで止められる社会をつくりたいです」

岡本さんのひとこと

それぞれの差別・偏見・誹謗中傷をまとめ、左右に配置しました。歴史に学び生かすこと、一人一人の意識を変える大切さに気付きました。

信州から五輪へ

信州から五輪へ

長野市・広徳中3年 西村 優那さん

県内で事前合宿―選手の声は

「東京五輪は4年に1度、しかも自国開催という貴重な機会。長野とどんな関わりがあるのか気になり、事前合宿に目をつけました。国ごとにまとめて統一感を出しました。どうすれば少ない文字数で言いたいことが伝わるか考えて見出しを付けました。伊那市で合宿した東ティモールの選手が、山のある風景が故郷と似ている―と話していたのが印象的でした。長野の良さが世界に認められたようでうれしかったです」

岡本さんのひとこと

テーマを明確にして、国ごとの記事と長野県地図をバランスよく配置しました。選手と住民の関わりようを読者に分かりやすく伝えています。

コロナに負けるな!鉄道会社の取り組み

長野市・信大付属長野中1年 滝沢 惇雄さん

生き残りへの努力を感じた

「鉄道が大好きで、小学生のころから新聞記事をスクラップしています。新型コロナウイルスの影響で経営が苦しい鉄道会社が、新型車両を導入したりイベントを開いたりして生き残りをかけている様子をまとめました。イベント一つにも、鉄道ファンに楽しんでもらうためにさまざまな工夫や努力をしていることが分かりました。これからイベントに参加する時は、そんな鉄道会社の思いも感じながら楽しみたいと思います」

岡本さんのひとこと

鉄道会社の取り組みを集めました。空席の活用やイベントなど9段階に分けた記事と簡潔なコメント、大見出しが応援する気持ちを伝えています。

2025年問題

2025年問題

長野市・信大付属長野中1年 阿部 和花さん

日本社会が崩壊する危機感

「総合的な学習の課題探求で10年後の社会を調べたら、2025年問題という言葉にぶつかりました。少子高齢化が進んで医療や介護、子育てなど、さまざまな問題から日本社会が崩壊してしまうのではという危機感を持ちました。中学生の私には、学校や家庭で話してこの問題を知ってもらうことぐらいしかできませんが、女性が赤ちゃんを生み育てやすい社会、働きやすい社会の実現に向けて関心を持っていきたいと思います」

岡本さんのひとこと

2025年問題に関わる記事を多角的に集め、六つの分野で配置。大きな課題だと分かります。皆が現状に目を向ける必要性を訴えています。

新しく変わる働き方のかたち

長野市・長野日大中2年 鈴木 ひなさん

テレワークの難しさに共感

「両親がテレワークをしていたのをきっかけに、コロナ禍の新しい働き方に興味を持ちました。急なテレワークに戸惑う人が多い中、シェアオフィスや企業の支援策などが広がっていること、業種によっては難しいことも知りました。両親は、感染を防ぎながら働けるのはいいけれど、コミュニケーションが難しいと言っていました。私も中学入学後すぐ休校になったので、そうした気持ちに共感しながら、記事を集めました」

岡本さんのひとこと

新型コロナ感染拡大に負けない経済活動のあり方を分析しました。新しい働き方の幅広い効果に気付き、自分の将来へ関心を深めています。

中止か開催か揺れる思い

中止か開催か揺れる思い

長野市・長野日大中2年 北條 花音さん

地域のお祭り工夫して実施

「中止か開催かといえば、オリンピックが思い浮かびます。私は地域のお祭りが好きなのでこのテーマを選びました。『長野びんずる』のようにほとんどが中止なのではと思って調べたら、開催されているイベントも多く、驚くと同時にうれしく思いました。規模を縮小したり、動画を配信したりする工夫もすばらしいと思います。中止か開催か―。どちらが正解かはよく分かりませんが、自分なりに記録に残せてよかったです」

岡本さんのひとこと

コロナ禍のイベントについて、各地域の決断をテーマに据えました。どんな形であれ、開催が人々の心を明るくしてくれたと考えています。

森林の維持は暮らしの源 ECO≠エゴ

千曲市・屋代高付属中1年 宮沢 希成さん

ウッドショックからつながった

「『ウッドショック』という言葉を知り、森林保護や林業をテーマにしました。ソーラー発電でも山や森を切り開く大規模計画などは『本当にエコになっているのか』と感じます。そんな気持ちを大見出しの『エゴ』という言葉に託しました。新聞を開くと、地域と国際、科学のように掲載面は違うのに関連する記事が見つかる。点と点がつながるようでした。政治や経済の面からも林業を考え、力強い産業になってほしいです」

岡本さんのひとこと

大見出しでテーマと自分の思いを表しています。林業・経済、活用・保護、環境問題で分類。考察とまとめが分かりやすいレイアウトです。

官民宇宙開発競争時代キター!!!

官民宇宙開発競争時代キター!!!

千曲市・屋代高付属中1年 森 栗之介さん

次の時代の技術へ突き進む

「宇宙開発に携わることは将来の夢の一つです。科学に関心があり、日頃からスクラップしています。民間企業の活躍が目立っていたので、官と民に分けて考えてみました。背景を宇宙らしく黒にし、大見出しはロケットが打ち上がる様子を重ね、次の時代に突き進むイメージを表現しました。競争は宇宙開発や技術力を伸ばしますが、『宇宙軍』などの軍事利用ではなく、研究や人々の暮らしに生かされるべきだと思います」

岡本さんのひとこと

官と民を視点に、宇宙開発の現状をまとめました。高まる期待とともに環境への配慮や悪用しない必要性も指摘しています。

中学生の部

奨励賞

かけがえのない地球~できるか?脱炭素社会~

かけがえのない地球~できるか?脱炭素社会~

大久保貴子さん(佐久市佐久長聖2)

~戦後76年~私達がすべき事

~戦後76年~私達がすべき事

柳島優来さん(長野市広徳3)

読み解く五輪~調和と多様性のヒント~

読み解く五輪~調和と多様性のヒント~

吉池珠優さん(長野市信大付属長野1)

新型コロナ出口はどこに?

新型コロナ出口はどこに?

鹿熊鈴さん(長野市長野日大2)

気候変動で頻発する水害から命を守る

気候変動で頻発する水害から命を守る

村田心紬さん(長野市長野日大1)

選手の心の健康を脅かすSNS~東京2020を通して~

選手の心の健康を脅かすSNS~東京2020を通して~

兼沢健真さん(千曲市屋代高付属1)

見つけよう!言葉の力

見つけよう!言葉の力

助川桃佳さん(千曲市屋代高付属1)

ゴミ減量に取り組む がんばる信州

ゴミ減量に取り組む がんばる信州

塚田真心さん(坂城町坂城1)

一瞬のできごと 町をのみこんだ土石流

一瞬のできごと 町をのみこんだ土石流

山神仁胡さん(原村原2)・大内愛泉さん(同2)

今、自然界で何がおきている⁈

今、自然界で何がおきている⁈

神藤翔さん(飯田市飯田東2)

中学生の部

特別賞

信州郷土の力士御嶽海 これまでの名取組ランキング

信州郷土の力士御嶽海 これまでの名取組ランキング

井浦ゆうとさん(千曲市稲荷山養護3)

小学生の部

優秀賞

新型コロナと五輪 光と影

佐久市・岸野小6年 橋詰 きよさん

頑張りと反対意見を対比

「陸上と水泳を習っていて東京オリンピックを楽しみにしていました。でも、新型コロナの感染拡大で開催に反対する意見もあることを知りました。そんな中でも頑張る選手を応援したいと思いました。五輪の記事を全て切り抜き、光と影に分けて選びました。「光」は頑張る選手の写真を、「影」は印象的だった見出しを中心にまとめ、黄色と黒で対比させました。たくさんの人が頑張って開催されたことを知ってほしいです」

岡本さんのひとこと

光と影の対比が明確な記事を複眼的に集めました。五輪出場選手の姿に勇気をもらいつつ、感染拡大の中の開催に悩んだことが分かります。

温暖化の進んだ先にある未来 わたしたちはどうする?

温暖化の進んだ先にある未来 わたしたちはどうする?

松本市・山辺小6年 藤沢 花純さん

増えた水害、対策考えたい

「週に一度まとめて新聞を見ていますが、温暖化の記事が意外と多く、調べてみました。温暖化は気温だけでなく水にも関わり、陸や海の水がどんどん蒸発して地球の水の循環が激しくなり、豪雨や河川の氾濫、土砂災害を増やしていました。作品は気温上昇を伝える記事と、関連の大雨や防災の記事を並べ、頭に入りやすいよう工夫しました。周りの自然を大事に、自分ができる温暖化対策を日々考えていけたらなと思います」

岡本さんのひとこと

大見出しと記事のレイアウトを工夫しています。温暖化のさまざまな影響を知り、自分たち一人一人の行動が重要だと考えました。

みんなで護ろう動物たちの命

辰野町・辰野西小5年 浜 康太郎さん

守りながら苦しめている

「新聞を読んでいて、動物の記事は写真が載ってよく目につくので集めてみました。記事は、『人にまもられ生きる』など三つのテーマに分けて見出しを付けました。人間は、数が減っている動物をいろいろな方法で守っています。でも、人が出したプラスチックのごみを食べてしまう動物もいて、苦しめている現実もあります。分別したり、ごみ拾いの活動に参加したりして少しでもごみを減らせるように協力したいです」

岡本さんのひとこと

人と動物の関係を三つの視点で考えました。プラごみ誤摂取にショックを受け、みんなが気を付けることで改善すると訴えています。

ライチョウを絶滅から守ろう!

ライチョウを絶滅から守ろう!

辰野町・辰野西小5年 松田 実久さん

山のすみかに危険が迫る

「新聞でライチョウのひなの写真を見て、かわいかったので興味を持ちました。記事を集めると、絶滅しないように多くの場所で保護活動をしていることが分かりました。記事はテーマごとに見出しを付け、大事な部分には線を引きました。最近は、登山者が出す食べ物のごみなどが原因で、標高が高い山で熊が目撃され、ライチョウのすみかにも危険が迫っています。山に行ったらごみを持ち帰り、保護活動に協力したいです」

岡本さんのひとこと

大見出しで明確なテーマを表現しています。ライチョウの現状を他の動物にも関わる課題として受け止めて、危機感を伝えています。

長野県っておいしいね 収かくの秋~2021~

長野市・信大付属長野小4年 三原 豪さん

果物の話題、調べると豊富

「クラスでリンゴを育てていることもあり、ブドウや桃、ホオズキなど、ほかの果物についても調べてみようと思って新聞のスクラップを始めました。たくさんの記事を絞り込むのには苦労しましたが、果物のシールを作って貼ったり、人の目のマークを書き込んだりして、どんな人が見ても分かりやすくなるように工夫しました。これからは、海外のニュースなどもテーマにして、いろいろ調べていきたいと思います」

岡本さんのひとこと

長野県のくだものをテーマに、収穫や加工のほか、盗難の問題も取り上げて、多角的にまとめました。他の季節にも興味が広がっています。

熊!出没注意!!

熊!出没注意!!

飯田市・浜井場小4年 神藤 航さん

伊那谷で目撃、危険性知る

「新聞を読んでいたら『熊警戒』というマークがたくさんあり、気になって記事を集めてみました。長野県の地図に記事で出てきた地名の場所を赤く記すと、山に挟まれた伊那谷で多く目撃されていることが分かりました。出没の原因、遭遇時の対処法、行政の対応などは文章から抜き出してまとめ、見た人が注意できるように工夫。分からない漢字があったり時間がかかったりして大変でしたが、危険性がよく分かりました」

岡本さんのひとこと

多発する熊の出没をテーマに関連記事を継続的に集めました。記事の出没地点を地図で示し、警戒と安全確保の大切さが分かります。

新型コロナに負けるな!!!2020+1東京オリンピックパラリンピック

高森町・高森北小2年 尾地 悠進さん

最高の笑顔で集まる選手

「幼稚園の時に東京で建設中の国立競技場を見ました。パラリンピックの水泳の観戦チケットが当たりましたが新型コロナで応援に行けず、代わりに新聞で調べると手足や目などいろんな障害のある人が泳いでいると知り驚きました。開会式は、感染対策でカメラマンが近くで撮れないから遠めの写真なのかなと考えました。世界中の選手が最高の笑顔で集まっている写真を見て、2024年のパリ大会も応援したいと思いました」

岡本さんのひとこと

新聞のスクラップが祖父母との対話につながり、前回の東京五輪の思い出を聞きました。自分が応援した思いをきちんと記しています。

小学生の部

奨励賞

オリンピックから見えた~人それぞれの考え~

オリンピックから見えた~人それぞれの考え~

堤小万智さん(佐久市野沢5)

2020+1夏の信州にいやされる

2020+1夏の信州にいやされる

片井翔太さん(佐久市岸野6)

信州にゆかりのある東京オリンピック選手の心に残った言葉

信州にゆかりのある東京オリンピック選手の心に残った言葉

武田優奈さん(佐久市岩村田5)

新聞でお花見!

新聞でお花見!

轟実結さん(長野市松代5)

なぜ減らない「特殊詐欺」~人をだます手口とは~

なぜ減らない「特殊詐欺」~人をだます手口とは~

松沢晃佑さん(白馬村白馬南6)

子どもたちに今、出来ること

子どもたちに今、出来ること

牧内莉玖さん(喬木村喬木第一3)

小学生の部

特別賞

子どもの貧困とヤングケアラー

子どもの貧困とヤングケアラー

藤本彩花さん(喬木村喬木第一3)

分類・考察に試行錯誤 新たな視点発見

信濃毎日新聞社NIEアドバイザー 元長野市立清野小学校校長 岡本 力さん

 新型コロナウイルス問題が広く社会に影響を及ぼし、感染対策に注意を払いながらの生活が続いています。本年度も、小中学生が新聞記事から見いだした課題と自分なりの思いをまとめたスクラップ新聞がたくさん集まりました。

 小学生の部は、新型コロナと東京五輪・パラリンピックの関連を考えた作品が多く、感染拡大の懸念と大会開催への揺れる思いがありました。長野県のニュースと温暖化や野生動物との関わりなどを考えた作品からは、地球規模の今日的課題が自分の身近にあることに気づき、行動を呼び掛けています。

 中学生の部は、新型コロナに関連した働き方や人権のほか、アフガニスタン情勢や環境、高齢化社会などの問題を多くの作品が多角的な視点で考察、課題解決に向けて追究していました。宇宙や鉄道といったこだわりのテーマで記事を集めた作品も個性があり、視点の持ち方や考え方に驚きや共感を覚えました。

 小中学生ともに、読者を引きつけるレイアウトの作品が多くありました。テーマに沿ってスクラップした記事を分類・考察し、関係づけて配置していく。完成までの試行錯誤が想像できます。その過程に、社会への関心の高まりや視野の広がりがあるからこそ、自分の思いや考えを大見出しやまとめに表現できるのです。

 社会は日々、変化し、新聞は多くのニュースを伝えています。スクラップを続けると、一つの記事では気づかなかった新たな事実や視点を発見し、情報がつながっていきます。そうしたスクラップ新聞作りを通して身につけた考える力、追究する力を発揮し、自分の探究心をさらに大きく伸ばしていってほしいと思います。