2019年10月14日

悪条件重なり決壊① 想定超えた雨量 川幅狭まる地形 記録的水位で越水か

 台風19号は長野県内にも記録的な大雨を降らせ、大きな爪痕を残した。千曲川では1983(昭和58)年9月の台風による大水害以来となる堤防決壊が長野市で発生。濁流が堤防を越える越水も上田市から中野市まで相次ぎ、広範囲で住宅地や農地が浸水した。当時より河川改修が進んでいたはずの現場で何が起きたのか。千曲川の水位が急に上がったことで、支流からも水があふれ被害を広げた。
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 「いろんな悪条件が重なった」。国土交通省千曲川河川事務所(長野市)の万行(まんぎょう)康文副所長は13日午後、被害の原因についてそう話した。
 堤防決壊の引き金となったのは、決壊地点付近の水位の上昇だ。想定を超えた雨量に加え、5キロほど下流の中野市立ケ花付近で川幅が急に狭まる狭窄(きょうさく)部があるため、手前の長野市北部で水位が上がり、護岸に大きな力がかかった。
 決壊地点付近の川幅は約1050メートルなのに対し、立ケ花は5分の1程度の約210メートルしかない。今回、立ケ花の観測点の水位はこれまで最高だった11・13メートル(1983年9月)を更新し、12・44メートル(暫定値)を記録。万行副所長によると、決壊地点はこの影響を受ける範囲に含まれるという。
 広内大助信州大教授(自然地理学)によると、水害が起きた長野盆地の最北部には活断層「長野盆地西縁断層帯」がつくった丘陵が広がっており、千曲川の流れが遮られるようになっている地形だ。広内教授は「被災地のある一帯は千曲川などが運んだ土砂が積もった氾濫原と呼ばれる平野」と話す。
 堤防の決壊は、堤防を越えた水が外側の斜面を削る「越水」、堤防を造る土に水が染みこんでもろくなり、崩壊する「浸透」、堤防の下部が水流で削られて崩れる「侵食」といったケースがあるが、今回は越水が要因とみられる。
 13日午前0時55分、同事務所は、決壊地点付近のカメラ映像で越水を確認。同2時すぎに何らかの原因でカメラの映像が途切れた。それまでの間、事務所の職員たちは、水が堤防の外側(住宅地側)を少しずつ削っていく映像を見ていた。決壊の瞬間は確認できなかったが、万行副所長は「危ないと思った」。
 千曲川は83年に飯山市戸狩地区で決壊し、大きな被害をもたらした。今回の決壊地点付近の堤防は84年に完成。その後、住民らがサクラを植樹する活動をするため、堤防の強度を維持する盛り土工事を行なった。ただ、川底の土砂を除去して川の断面を広げる工事が残っていた。
 長野市の加藤久雄市長は同日の記者会見で、今回の決壊地点について「工事が終わった堤防で、破堤しないという安心感があった。それでも破堤すると知ったので、国には破堤しない堤防を築く協力をお願いしたい」と述べた。万行副所長は「(決壊を)反省し、地域の期待により一層応えたい」と話した。