2020年5月12日

長野の千曲川堤防 桜並木の一部伐採へ

 台風19号災害で決壊した長野市穂保の千曲川堤防で、地元住民に「桜づつみ」として親しまれてきた桜並木の一部が本年度、伐採されることが11日、分かった。国土交通省千曲川河川事務所(長野市)が、堤防の強化のためその両側をコンクリートブロックなどで覆う工事をすることが理由だ。堤防決壊から13日で7カ月。地元の人たちからは桜の伐採を惜しみつつ、「命を守るためには仕方がない。今度こそ決壊しない堤防にしてほしい」との声が出ている。
 桜づつみは、千曲川左岸の長野市長沼地区から上高井郡小布施町の小布施橋まで4・3キロにわたり、景観整備や堤防強化などを目的に、堤防に盛り土をした上で桜を植えた国や市の事業。総事業費約7億円をかけて2011〜16年に整備された。住民も協力し、桜約400本を植えた。
 今回伐採されるのは、決壊箇所を含む560メートル。同事務所はこの他の区間の桜づつみは「地元の意見を聞きながら今後決めたい」としている。
 地元の長沼小学校の児童は15年、「桜づつみ」と題する歌を作り、過去の水害の歴史を題材にした創作劇の中で発表した。同事務所は、決壊現場近くに建っている歌碑は「工事のためにいったん撤去するが、元に戻す」としている。
 当時、長沼小6年だった高校3年の清水雄大さん(17)=長野市赤沼=は「桜がなくなるのは悲しいが、歌や自分たちの経験や思いはずっと残る」。清水さんの自宅も全壊の被害に遭い、現在復旧工事が進む。「桜づつみの歌とともに自分が経験したことを今後伝えたい」と話す。
 桜づつみ整備事業に伴い結成された地元の期成同盟会元会長の関茂男さん(86)=長野市穂保=によると、国交省からは当時、景観が良くなる他、盛り土で堤防が強化されると説明され、地元として協力した。だが、多額の公費で整備された堤防は事業終了後から約3年で決壊した。関さんは「今度こそ、決壊しない堤防を造ってほしい」と願っている。

千曲川左岸堤防沿いに約400本の桜の木を植えて整備された「桜づつみ」=11日午後5時37分、長野市穂保