2020年10月 4日

被災地のいま 佐久市 「黄金色の風景戻って」

 春先には思ってもみなかった風景が目の前に広がる。「1年もたつとこんなふうになるのか...」。佐久市中込の農業井出久治さん(64)は千曲川支流、滑津(なめづ)川の堤防が決壊した付近を見て驚いた。自身の田んぼを含め、昨年10月の台風19号で被災した辺りの農地に雑草が生い茂っているからだ。
 この時季、いつもなら一帯は黄金色の稲穂が広がる。国道141号を挟んで西側では、そんな風景が見られるようになったが、決壊箇所に近い東側は対照的。決壊箇所には二つの仮堤防も築かれ、付近では3日もトラックが頻繁に通行。農地復旧に向けた耕作土が積み上げられていった。
 県は決壊箇所の前後で堤防の幅を広げ、かさ上げもする計画。ただ本格化はこれからで、完了は2023年度初めをめどとする。「黄金色の風景が戻ってほしい」。井出さんはそう願う。
 昨年10月12日、濁流が押し寄せた中込地区の杉の木区では車で移動中の被災が相次ぎ、避難中だった中島正人さん=当時(81)=が亡くなった。住宅被害も続出。ただ修理が進み、戻る人も目立ってきた。
 自宅が床上1・6メートルの浸水被害に遭った宮沢四郎さん(76)も、大掛かりな修理を経て7月に戻った。「災害に遭って初めて、怖さも、人の優しさもつくづく感じました」。今も大雨が降ると心配になる。「安全な堤防にしてほしい」と語った。
 市内では各地で千曲川や支流が増水・氾濫。入沢の谷(や)川、常和の田子川では県が復旧で拡幅を計画しており、用地買収が伴う。谷川沿いの自宅が用地買収の範囲に掛かる三石美代子さん(76)は、移転などの対応をどうするか、現時点では「答えが出ていない」という。「あっという間の1年でした」と振り返りつつ、「まだ落ち着かないですね」と静かな口調で話した。(須田充登)

決壊した滑津川の堤防周辺を眺める男性。一帯の農地は雑草や砂利に覆われていた=3日午前10時21分、佐久市中込(〓(季の子が人)弘樹撮影)