2020年10月 8日

被災地のいま 長野市篠ノ井 よりどころ水に備え

 「越水で土手が削られ、長引けば決壊したと聞いている。そうしたら被害は甚大だったはず」。7日、千曲川堤防の越水箇所に隣接する長野市篠ノ井塩崎の軻良根古(からねこ)神社の境内。氏子総代の松井法幸さん(73)が当時を振り返った。
 神社側の堤防が大きくえぐられ、のり面のコンクリート壁が剥がれ落ちた。境内も20〜30センチほど土砂に埋まった。土砂は社務所の裏で止まり「神社が洪水を止めてくれたという話になっている」。
 神社は、年末年始の越年参拝や小学校の新入生の安全祈願祭、春と秋の祭りでは子どもみこしや奉納相撲が行われる「地域のよりどころ」。氏子たちも自ら小型重機で土砂を取り除いた。
 ギンナンがたわわに実ったイチョウの大木を見上げて松井さんが言う。「今年も結構なったね」。例年の越年参拝では、ギンナンを千曲川の水で洗って配るが、昨年は実が土砂に埋まった。2年ぶりのギンナン拾いも間もなくだ。
 堤防に上がると、土のうが連なっていた。国土交通省千曲川河川事務所(長野市)は、越水箇所を含む約680メートルの区間で住宅側ののり面の補強工事を6月までに終えた。11月からは河川側の護岸工事を進め、年度内に完成させる計画という。
 堤防沿いに暮らして半世紀になる宮入治子さん(79)は毎日堤防に上がっている。この日も足を運び「(工事で)安心して暮らせるようになってほしい」と願った。河川敷の畑で白菜の手入れをしていた工藤淑子さん(67)は「(浸水被害で昨年は)全滅したが農業は生きがい」と話す。
 一方、河川敷にある塩崎運動場は一面に草が生え、倒れかかったバックネットが無残な姿をさらしていた。ふと、少年時代に白球を追った記憶がよみがえった。市職員が草刈りをして維持しているが、野球少年らの声が飛び交う日が戻るのは、もう少し先になりそうだ。(井口賢太)

土のうが並ぶ堤防道路から千曲川を眺める松井さん=7日午前10時8分、長野市篠ノ井塩崎(〓(季の子が人)弘樹撮影)