2020年10月10日

被災地のいま 小布施町・須坂市 にぎわいと寂しさと

 一粒一粒がみずみずしく輝くブドウ「シャインマスカット」、つややかなリンゴ「秋映」...。小布施町の農産物直売所「おぶせ物語」には9日も、地元の農家が手間を惜しまず育てた果物や野菜が並んだ。
 地元の農家有志が1995年に開設。毎年秋の収穫期は最大の稼ぎ時だ。だが昨年は台風19号による大雨のため近くで千曲川があふれ、一帯は水没。直売所もレジなどの備品が流された。出荷する農家らが協力して土砂をかき出し壁などを改修。今年3月には本格的に再開した。
 そして再び実りの秋を迎えた。特産の栗は昨年の冠水や今年の長雨の影響か粒がそろいにくかったという。それでも直売所に出荷している小林充人さん(70)は「楽しい買い物の時間にしてもらわなくちゃ」。訪れる客との会話に冗談を絶やさない。
 須坂市の千曲川河川敷にある福島スポーツ広場。天然芝が売りだったサッカー場には雑草が生え、この日は前日までの雨で水たまりができていた。千曲川の増水で5センチほど土砂が堆積し、サッカーゴールや倉庫は流された。
 芝生は張り替え費用がかさみ、市は原状復帰を断念した。春から土砂を取り除き、7月から土のグラウンドとして使うようになった。ただ、市サッカー協会会長の久保田博さん(71)によると、練習中にシューズが雑草に引っかかり、いまだに戸惑う子どももいる。
 被災前は週末になると大会が開かれ、県内外から訪れる小中学生のチームのにぎやかな声が響いていた。今はその様子が見られない。「寂しいね」。久保田さんはそうつぶやき、悲しげに辺りを見渡した。市は別の場所に人工芝のグラウンドを整備する検討に入った。(渡辺司馬)

大勢の買い物客でにぎわう直売所。被災当時は約1・5メートルの高さまで浸水した=9日午前11時2分、小布施町大島(中村桂吾撮影)