「あの水害を忘れてはいけない」。昨年の台風19号で決壊した皿川右岸に位置する飯山市の北町区の区長、石沢清司さん(69)は12日、復旧した堤防を眺めながらつぶやいた。携帯電話のカレンダーには2019年10月13日の日付に、「午前4時5分 水害避難」と記録している。当時、副区長として区民に避難を呼び掛けた時刻だ。
水害は住民の意識に深い爪痕を残した。今年7月に大雨が降った時にも「区長、大丈夫ですかね」と不安げに尋ねてきた住民がいた。「地域にはお年寄りが多い。心配になる気持ちも分かる。一度水害に遭っているから、どうしたって記憶がよみがえってくる」と石沢さん。皿川堤防から約500メートル南にある築約60年の自宅も床上浸水した。
決壊した堤防の原形復旧は昨年内には完了。現在は、堤防のかさ上げを目指した改良事業に向けて県が測量・設計に着手している。県北信建設事務所(中野市)は早期の完了を目指すというが、関係機関との協議や幅の拡張に伴う周辺の土地の調整など課題は山積みだ。石沢さんは「住民が安心できるよう早めに対応してほしい」と望む。
ほぼ全世帯が浸水被害に遭った福寿町区にある、創業約120年の和菓子店「大黒屋製菓舗」。店頭には地元産のもち米を使った秋限定の大福が並んでいた。台風19号では床上約90センチの浸水被害に遭って、一時営業をやめた。そのため毎年待ち望んでいる人たちに大福を販売できなかった。店主の佐藤信一さん(78)は「今年は無事味わっていただくことができる。良かった」と目を細めた。
(赤池悠)
(おわり)
2020年10月13日
被災地のいま 飯山市 住民の意識に深い爪痕


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