2020年10月14日

雨量把握 精度向上へ実験 日本無線と信大・吉谷教授

 長野市に主要事業所がある日本無線(東京)は近く、信州大工学部(長野市)の吉谷純一教授(河川工学)と共同で、小型気象レーダーを生かしてより正確な雨量把握を目指す実証実験を始める。県内にも多大な被害をもたらした1年前の台風19号など豪雨による災害が相次ぐ中、気象庁などが運用する既存の大型気象レーダーを補完し、局地的な雨量を分析する機能を高める構想だ。実験データを活用し、自社が製造する小型気象レーダーの需要喚起を図る。
 気象レーダーは、アンテナを回転させながら周囲に電波を発信し、一定範囲内の雨や雪を観測する。電波が雨や雪に当たって跳ね返り、戻ってきた電波の強弱から雨や雪の量を分析する=図。
 実験では、同社製の小型気象レーダーを同学部の建物屋上に設け、稼働させる。観測範囲は半径50~80キロ程度。レーダーで把握した雨量と、地上の雨量計の計測値を照らし合わせ、精度を調べる。実験期間は2025年3月までの約5年間の予定。8~9割以上の精度を目指す。
 気象庁は、諏訪市・茅野市境の車山(1925メートル)山頂に同社製の大型気象レーダーを設置し、県内の広範囲を観測している。ただ、吉谷教授によると、地域や気候条件によって、レーダーが把握した雨量と地上での計測値の差が拡大。特に高山が多い県内は電波が遮られ、局地的に発生する集中豪雨の雨量を把握しきれないのが弱点という。
 実験では、比較的狭い範囲で、リアルタイムで高精度に雨量を把握できる性能を検証する。堤防やダムに頼らず流域全体で被害を軽減する「流域治水」に沿って、小型気象レーダーを地域の防災システムに組み込むことで災害対策の立案に役立てる方針だ。
 日本無線は傘下に長野日本無線(長野市)や上田日本無線(上田市)を持つ。19年12月期の連結売上高は1521億円で、このうち気象レーダーを含むソリューション・特機事業は688億円。気象レーダーは気象庁や国土交通省に供給し、国内シェアはトップクラスだ。
 ただ、国内は主流の大型レーダーの整備が一巡し、新たな需要を見込みにくい。同社は小型レーダーを、13年の発売以降、主に東南アジアなど海外で販売してきたが、集中豪雨が頻発する中、特定範囲の雨量把握の精度向上に向けて国内でも普及を図る。
 総務省にレーダーの設置許可を申請中で、年内か来年前半に稼働させる計画。当面は情報を蓄積し、将来はAI(人工知能)を組み合わせて気象予測にも生かす考えだ。日本無線ソリューション事業部は「他社に先駆けて着手し、防災関連事業での存在感を高めていきたい」としている。

実証実験に使う小型気象レーダー(中央)。内部のアンテナから電波を発信し、雨量を解析する=6日、長野市の日本無線長野事業所