2020年10月25日

「災害公営住宅」整備望む住民ら 初の意見交換会

 昨年10月の台風19号災害で被災した長野市長沼地区で24日、市の「災害公営住宅」整備を望む住民らの意見交換会が初めて開かれた。家の建て替えは断念しても住み慣れた場で暮らしたいとの高齢者らの願いは切実。だが、仮設住宅の入居期限があと1年となる中、市はいまだ明確な方針を示していない。被災住民の声をどう届け、人口減が進むふるさとの再生につなげていくか、模索が始まっている。
 住民代表らでつくる長沼地区復興対策企画委員会によると、災害公営住宅整備を希望する住民は現時点で15世帯。仮設住宅の入居期限から地区外への転居を考えざるをえず、「分からない」との回答も7世帯あるという。ローンが組めない高齢者も多い。
 「解体を決めた家を見るたび涙が出る。何としても戻りたいが資金が確保できない」「ここなら近所の人とおしゃべりできる。よそで同じつながりをつくるのは難しい」「時々車で通っている。向こうは寂しい」...。整備を希望する仮設暮らしなどの住民6人と同委員会メンバーとの意見交換では、そんな切実な声がこぼれた。
 須坂市の妹宅で暮らす芝波田洋子さん(69)もその一人。災害までは隣近所と行き来してお茶を飲む日々。災害時も、泥水が迫り、外で立ち往生していた際に近くの住民が2階に引き上げ、避難させてくれた。「地域のつながりをいっそう感じた」。だが、自宅は全壊判定で5月に解体。主な収入は年金だ。再建は費用がかさむ上、跡を継ぐ家族もいないため断念した。
 災害公営住宅のことは、個人的に、市住宅課に何度も整備をお願いしてきた。2011年の県北部地震後、地区ごとに戸建ての災害公営住宅を建てた下水内郡栄村もほかの被災者らと視察した。だが、「市からは豊野町(に建設予定の災害公営住宅)やほかの市営住宅を勧められる」と芝波田さん。諦めを感じることもあっただけに、意見交換会後、「悩んでいるのは自分だけではないと思え、気持ちが楽になった」と話していた。

 市が方針を明示していない背景には、隣の豊野町に整備を予定していることに加え、国が新たに打ち出した治水方針「流域治水」の存在もある。浸水想定区域内で特に危険な地域での住宅の開発などを規制する内容が含まれており、今後国から詳細な内容が示され次第、市は「県などとも相談しながら規制の内容を決めたい」(建築指導課)とする。市住宅課は「地域コミュニティーの維持については住民と一緒に考えていきたい」とするが、現時点では長沼地区での災害公営住宅整備は未定としている。
 こうした大きな流れも踏まえつつ、長沼地区復興対策企画委員会の公営住宅担当は今後も住民間での意見交換を重ね、市も交えた議論につなげる考えだ。この日の意見交換会では「長沼に残りたいという若い人もいる。公営住宅整備はコミュニティー維持の核になる可能性もある」と、将来を見据える意見も出た。
 同委員会副委員長で長沼地区住民自治協議会長の西沢清文さん(66)は「今長沼にいる住民も、離れて暮らす住民も一緒になって、まずは自分たちで今後の地域の方向性を考えていく必要がある」と気を引き締めている。(佐藤勝)

話し合う芝波田さん(手前2人目)ら長沼地区の住民たち=24日午後4時24分、長野市穂保