信毎 Housing Station
軽井沢の土地に熱視線 新型コロナ下、地価上昇
2021年4月30日(金)

 世田谷、品川、足立...。雨で始まった大型連休初日の29日午前10時前、北佐久郡軽井沢町発地(ほっち)の農産物直売施設「軽井沢発地市庭(いちば)」の駐車場は半分ほどが埋まり、県外ナンバーがずらり並んでいた。施設を建設した町によると、平日から8割ほどを占め、別荘に住む人や最近移住してきた人が目立つ。

 新型コロナウイルス感染拡大で全国的には土地の需要が低迷しているのに、軽井沢町では地価上昇が止まらない。数年前からテレワーク環境が整備され、北陸新幹線(長野経由)で1時間余りと首都圏から近く、農地や山林も広がるなど自然豊か。リモートワークを始めようとする企業人らが増えている。大型施設の開設が相次ぐ南部の発地地区では2017年ごろから地価が急上昇。町は歓迎しつつ、乱開発やブランドイメージ低下につながらないよう、注意深く見守っている。

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 県全体では住宅地が2020年度比マイナス0・4%、商業地は同マイナス1・1%―。3月に発表された21年1月1日時点の公示地価は、新型コロナウイルス感染拡大による土地需要の減退などで下げ幅が住宅地・商業地ともに拡大し、下げ幅が広がるのはいずれも11年ぶり、下落は住宅地が24年連続、商業地が29年連続だった。一方、北佐久郡軽井沢町の住宅、商業地は軽井沢長倉往還南原、軽井沢上御原、軽井沢東野沢原、発地荒熊、発地長日向、長倉大日向、長倉鶴溜、長倉大池の8地点で2・0~10・0%上昇した。

 旧軽井沢別荘地内にある軽井沢上御原の地価は7・0%上がった。軽井沢駅から旧軽井沢銀座通りに向かう目抜き通りに近い。東京、京都、大阪、兵庫への3回目の緊急事態宣言が発令され、通りの客足は激減したままだが、町内では首都圏から移ってきた人たちからの求めや、感染収束後の観光需要をにらんだホテルや店舗への投資話が相次ぐ。町内のある不動産業者は「いずれ軽井沢に別荘を持ちたいと思っていた富裕層が、新型コロナを受けて購入に動いている。将来的な需要を先取りしている部分もある」とみる。19年度は391件だった町内の建築確認申請は、20年度は400件まで増えた。

 民間組織「軽井沢リゾートテレワーク協会」によると、会員施設は発足した18年の3施設から24まで急増。土屋芳春会長(軽井沢観光協会長)は「IT系企業人らの流入に拍車が掛かっている」。

 県内の公示地価上昇率上位5地点には、発地荒熊と発地長日向が入った。中でも風越公園南側の発地荒熊では、10年前より36%も上がっている。

 16年6月、2千平方メートルに農産物販売や飲食、イベントなどのスペースを備えた「軽井沢発地市庭」が本格開業。週末を中心ににぎわう。20年4月には200人近くが学ぶ私立の幼小中一貫教育校「軽井沢風越学園」が開校。通販大手ベルーナ(埼玉県)による大型リゾートホテル開業もあり、複数の不動産関係者は「相次ぐ開発が地価を押し上げている」と口をそろえる。

 町は伝統的な景観や樹木を保全しようと、土地を分譲・分筆する際は別荘地など「保養地域」では1区画千平方メートル以上が基準―と自然保護対策要綱で規定。発地地区は、保養地域より規制が緩いエリアも多く、新規参入が進みやすい―との見方もある。藤巻進町長は地価上昇を「地域の魅力が発見されたと受け止め評価できる」とした上で「土地利用の動向は、定めたルールに基づいて見守っていきたい」としている。

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