信毎 Housing Station
活気づく県内製材業者 米で住宅需要増
2021年5月27日(木)

 輸入建築用木材の価格が高騰し、県産材を扱う県内の製材業者が活気づいている。新型コロナウイルスの影響による米国でのリモートワーク推進で住宅需要が急増。世界的に供給量が不足し、輸入材が減っているためだ。フル稼働でも間に合わず、休止していた製材所に協力を求める業者も。一方、輸入製材を扱うプレカット工場はコスト増に頭を悩ませている。

 林野庁によると、米国ではリモートワーク拡大に加え、住宅ローンの低金利も追い風に2020年6月以降、郊外などで一戸建ての住宅着工戸数が急増。米国とカナダ市場で取り引きされる木材の指標価格は、19年比で約2・5倍になった。

 国内では21年3月の製材輸入量が前年同月比7%減の約38万立方メートルと、9カ月連続で前年割れ。集成材の輸入も減少傾向が続く。カナダや欧州から米国や中国向けの輸出が増え、日本向けの輸出が減少していることが要因という。建築用木材は半分を輸入に依存しており、県内を含め木材関係者の間で「ウッドショック」という言い方もされている。

 こうした供給不足に応じるため、県産材や国産材を中心に製材に加工する業者は活況だ。県木材協同組合連合会によると、輸入材を使っていた住宅メーカーや工務店からの受注が相次ぎ、供給が追いつかない事業者もいる。同連合会の宮崎正毅理事長が経営する瑞穂木材(下高井郡木島平村)は、扱う木材の9割以上が県産材。自社の製材機はフル稼働しても間に合わず、休止していた製材所に協力を求めている状況という。

 ただ、住宅建築用材を加工するプレカット工場は、輸入製材を扱う場合が多く、経費の増大に直面している。県内のある事業者は「既存の取引がある事業者に供給できる分を何とか確保しているが、製材品を調達する経費が増えて赤字になりかねない。極端な受注制限をするほどではないが新規の仕事は受けないようにしている」と明かした。

<「県産材、積極活用契機に」期待も>

 米国で建築用木材の需給バランスが崩れたことをきっかけに起きた「ウッドショック」。高温少雨の影響で良質な欧州産材が減ったことなども重なり、県内でも影響が広がっている。輸入材価格は世界情勢の影響で変動しやすく、今回の高騰が、県産材の積極活用を考える契機となることを期待する事業者もいる。

 国内では、高度経済成長で拡大した木材需要に対応するために輸入材が増えた経緯がある。価格が安い製材品の輸入量も増え、国内の製材業者が減少。県内の2019年度末の林業就業者は前年度末比53人減の1446人と90年代の半分以下に減り、5年連続で過去最少を更新した。戦後植林した人工林が利用期を迎え、19年の木材自給率は最低だった02年の約2倍の37・8%に上昇しているものの、林業の衰退には歯止めがかかっていない。

 全国の林業や木材産業の現場を取材しているジャーナリスト赤堀楠雄さん(57)=上田市=は「林業経営の採算難から、利用期を迎えた木が搬出できない状況が生まれている」と指摘。しかし、今回の事態を機に輸入材を使用していた住宅メーカーが国産材に切り替える動きもあり、「世界情勢に左右されにくい国産材の利用を進め、林業経営を好転させる好機だ」とする。

 県木材協同組合連合会の宮崎正毅理事長も「県内には豊富な森林資源がある。これから住宅を建てようとする人たちや住宅メーカーが地域の木材を見直す機会になるといい」とし、山での仕事の拡大と担い手の増加に期待した。

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