信毎 Housing Station
中野の空き家「100均」で販売 市・業者が連携
2022年5月17日(火)

 「100均で空き家を売ります」―。中野市は、所有者が手放したがっているのに売れない市内の空き家を"100均"(100円もしくは100万円均一)でPRし、購入希望者を募る取り組みをしている。現時点では100円物件2件を特設サイトに掲載。今年1月、うち1件を首都圏からの移住希望者が購入した。全国的にも珍しい取り組みで、各自治体が空き家対策を進める中、注目を集めそうだ。

 市は2021年3月、全国の"100均"空き家の売り手と買い手をつなぐマッチングサイト「空き家ゲートウェイ」を共同運営する「あきやカンパニー」(東京)と「YADOKARI(ヤドカリ)」(横浜市)の2社、「県宅地建物取引業協会長野支部」と計4者で連携協定を締結。市場では値が付かず、不動産業者が扱いづらい空き家の利活用につなげる狙いだ。

 同様の協定を結んだ自治体は福島県国見町に続き2例目。売買契約は当事者間で行うが、市は需要の掘り起こしや見学者の現地の案内などをサポートする。地域活性化につながる事業に向けた空き家の改修に、最大600万円(改修費の3分の2以内)を補助する制度も創設した。

 中野市の"100均サイト"について、横浜市立大の斉藤広子教授=不動産学=は「全国的に珍しく、官民連携の新しい取り組みといえる」と評価する。

 ■リスク要因に

 中野市がユニークな取り組みを始めた背景には、荒廃する空き家を少しでも減らしたいという思惑がある。

 県のまとめだと、1968(昭和43)年に2万戸を切っていた空き家は一貫して増加し、18年は過去最高の19万7300戸と、20万戸に迫る勢い。別荘地が多い県内の空き家率は19・6%に上り、都道府県別でワースト3の水準だ。解体やごみの処分費がかさむため、放置される空き家が少なくない。適切に管理されないと、地震や大雪で倒壊する恐れや、放火など犯罪の誘因になるリスクもある。

 ■あの手この手

 同市をはじめ、危機感を募らせた自治体は、あの手この手で対策に乗り出している。

 上田市は本年度、空き家を不動産事業者が取得し、移住希望者らに貸し出す「空き家セカンドユース事業」を始めた。市は事業者に対し、改修費の2分の1(上限50万円)を補助。移住者には「いきなり一戸建てを買うのはハードルが高い」という人もいるためだ。「まずはお試しで住み、地域を好きになってもらえたら」(住宅課)

 県建築住宅課が事務局を務める「県古民家再生協議会」は本年度、岡谷市の空き家で築100年以上の古民家を賃貸借で活用する事業者を、所有者に代わり公募。市などが改修を補助する取り組みを始めた。カフェやゲストハウスなど交流促進や地域の活性化につながる事業に限る。

 一方、15年施行の空き家対策特別措置法に基づく「空家等対策計画」を策定済みの県内の市町村は、22年4月時点で54にとどまる。自治体の人手不足や、ノウハウのばらつきも課題だ。

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