〈社説〉ワクチンの準備 現実と課題を見極めたい

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 政府目標の不確かさが一段と鮮明だ。新型コロナウイルスのワクチン接種である。

 承認した米ファイザー社製ワクチンは当面の供給量が限られ、高齢者の接種に遅れが避けられなくなった。対象は約3600万人。4月から全国一斉に始め、6月で終える想定だった。後の接種日程にも影響する可能性が高い。

 総合調整をする河野太郎行政改革担当相が明らかにした。週内にも計画を練り直すという。

 供給見通しの修正が相次ぐ中、現実の課題がより浮き彫りになったとも言える。準備を進める自治体に混乱が広がらないよう、丁寧に進めなくてはならない。

 ベルギーの生産拠点ではラインの拡張工事に伴い生産量が一時的に減少。加えて欧州連合(EU)が域外輸出を規制している。

 河野氏は先週、優先接種する医療従事者向けに最大117万回分を配分すると発表した。一方で対象人数は当初想定の370万人から100万人増えた。

 これまで欧州から届いたワクチンは約84万回分にすぎない。今週届いた第2便と同じ数が毎日空輸されたとしても、全ての高齢者まで行き渡るには半年ほどかかる。配分計画はあまりに楽観的だ。

 河野氏は高齢者の接種について「少しゆっくり立ち上げたい」と説明した。一部の自治体で試行的に始め、拠点から会場に送る際の不具合などを検証する考えも示している。安定供給が見通せない以上、当然の対応だろう。

 海外で1回だけの接種でも高い効果が得られたとの結果を基に、従来方針の2回接種にこだわらない可能性を示唆している。

 不明確な基準は接種体制に影響を及ぼしかねない。慎重に検証していくことが欠かせない。

 基礎疾患のある人には自己申告で優先接種を受けてもらう考えを示した。混乱を避けるには、対応する自治体の役割も重い。

 民間の調査で要介護高齢者の4割超が「接種するか分からない」と答えている。迷いの主な理由は副反応の不安や効果への疑問だ。会場までの移動の難しさを挙げる人も少なくない。周囲の関係者を通じて理解を深め、支える方法を検討する必要がある。

 日程優先で接種を急ぐことは、不安や疑問などさまざまな課題を置き去りにしかねない。

 調達の遅れによって生まれた時間的余裕を有効に使っていくことが重要だ。地域の感染状況も考慮しながら、現実と課題を見極め、着実に準備を進めたい。

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