〈社説〉流域治水法成立 住民の理解が欠かせない

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 ダムや堤防だけではなく、まち全体で水害を防ぐことを目的にした「流域治水」関連法が参院本会議で可決、成立した。

 被害が起きやすい地域の住宅や病院などの建設を許可制にするほか、川沿いの低地を保全する仕組みをつくる。高齢者施設の避難体制も自治体がチェックしていく。

 県内に大きな被害をもたらした2019年10月の台風19号災害など、気候変動でダムや堤防の能力を超える大雨が降るケースが目に見えて増加している。

 既存の治水対策は限界にきている。上下流に関係なく、流域全体で川への流出量を抑制することが欠かせない。洪水に備え、被害を最小限にする方策も必要である。

 流域治水の必要性は、数十年前から指摘されていた。それなのに、国や自治体は被害が顕在化するまでダムや堤防に頼った治水を続け、真剣に取り組んでこなかった。被害拡大に伴い、ようやく実現した政策の大転換である。

 ただし、流域治水を進めるには課題が少なくない。

 県内では田中康夫元知事の「脱ダム」宣言後に、ダムが計画されていた流域ごとに、自治体や住民が対策を議論した経緯がある。それでも前に進まなかった。

 長野市の浅川流域では、必要とされた遊水地が確保できず、雨水を各家庭でためる貯留タンクの設置の補助制度も利用がなかなか伸びなかった。住民理解を得るのが簡単ではないからだ。

 今回の関連法では、氾濫しやすい河川の周辺地域を知事が指定し、住宅などの新築時に居室の高さや強度をチェックする。浸水被害軽減に役立つ低地の水田などは開発を届け出制にする。対象地区では、住民の負担が増え、経済行為も自由にできなくなる。

 台風19号災害を受け、国や県が遊水地整備を進めている千曲川流域では、優良な農地を失うことに抵抗感を示す地権者が少なくないという。地権者が100人以上となる計画地もあり、多くは今後の見通しが立っていない。

 必要なことは、流域の住民や事業者、自治体が一体となって治水に取り組む環境をつくることだ。従来政策の限界を説明し、住民の財産と命を守るために何が必要なのか、自治体は丁寧に説明し、住民合意を得なければならない。

 住民負担を資金面や税制面で軽減する対策も考えていく必要がある。遊水地の整備では、地権者が納得できる補償や代替地の確保も欠かせない。

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