〈社説〉企業のヘイト 根絶へ社会が厳しい目を

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 在日外国人ら少数者への差別をあおるヘイトスピーチは、尊厳と人権を根幹から損なう暴力だ。排外的な主張をまき散らす企業に対しても社会は厳しい目を向け、根絶への取り組みを強めなければならない。

 化粧品会社のDHCが昨年11月以降、在日朝鮮・韓国人を差別する文章を公式ウェブサイトに繰り返し掲載した問題である。いずれも吉田嘉明会長の署名だった。

 競合他社のCMについて、「起用されるタレントはほぼ全員がコリアン系」と根拠なく断じたのが最初だ。朝鮮半島出身者の蔑称を用いた文章もあった。

 この4月には、報道で取り上げたNHKに矛先を向けている。幹部・アナウンサー・社員のほとんどがコリアン系、街角のインタビューさえコリアン系を選ぶと書き連ね、「NHKは日本の敵。つぶしましょう」と主張した。

 SNSで批判が広がり、商品の不買を呼びかける動きが起きても陰謀論めいた発言は続き、5月に新たな文章が掲載された。その後一転して、今月1日までに全て削除されている。

 災害時に栄養補助食品などの供給を受ける協定を結んでいた自治体で解消の動きが起きたほか、取引先企業からも不適切だとする声が出ていた。流通大手のイオンが説明を求めたところ、削除すると回答があり、発言を撤回することも確認したという。

 だからといって、うやむやに済ますわけにいかない。企業経営者の言動は社会的な影響が大きい。DHCは削除した理由さえ明らかにしていない。自ら経緯を検証し、説明する責任がある。

 もう一つ見落とせないのは、取引先企業の対応が手ぬるかったことだ。大阪の人権団体が取引停止の要望書を送った32社のうち、何らかの対応を取ったのはイオンを含め7社にとどまる。コンビニ各社を含め、知らぬふりをするように取引を続けた企業の責任も問われなければならない。

 DHCは以前にも自社サイトの会社概要で、在日コリアンに触れ「似非(えせ)日本人はいりません」などとする吉田会長の発言を載せたことがあるという。2017年には、子会社が制作した東京MXテレビの番組が、沖縄で米軍基地建設に反対する人たちをテロリスト扱いして批判を浴びた。

 ヘイトスピーチ解消法が施行されて5年。企業活動にも排外的な言動がはびこる現状を変えていくには不断の取り組みが要る。そのことを再確認する機会にしたい。

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