〈社説〉県迷惑防止条例 曖昧な規定は禍根を残す

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 どのような場合に処罰対象となるのか、明確になっていない。県迷惑防止条例である。

 県警が11月県会への提案に向け改定案作りを進めている。概要を公表し、意見公募を始めた。

 ストーカー規制法が及ばない付きまとい、待ち伏せなどを新たに「嫌がらせ行為」と規定する。暴言、不当な面会要求、連続電話も含む。違反には6カ月以下の懲役か50万円以下の罰金を科す。

 嫌がらせの要件については、正当な理由がなく、恋愛感情等に基づかないで行うこと―とする。

 実際に、何をもって適用しようというのか。線引きがはっきりしない。県警は、感情について具体的に規定してしまうと、それ以外の理由による行為が取り締まれなくなる恐れを挙げている。

 違反に当たるかどうかは案件の都度、警察の裁量で判断することになるのだろうか。それでは恣意(しい)的な運用を広げかねない。

 嫌がらせを禁じる条例は、長野を除く各都道府県で改定、施行がなされている。要件について、他県では「ねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的で」(愛知)などとする例が多い。

 処罰対象となる行為は明確に規定しておくことが、刑罰を科す法令の根本原則だ。それを欠けば、不当な処罰を生む恐れがある。曖昧な規定は将来に禍根を残す。認めることはできない。

 解釈によっては権利が侵される恐れも意識しなくてはならない。刑事法規の専門家からは、思想に関わる表現活動さえ「迷惑行為」として取り締まることが可能になる、との指摘がある。

 東京都では2018年の改定の際、市民のデモや表現の自由を規制しかねないとして反対運動が起きた。東京の弁護士会は個人間の恨み、ねたみの場合に限定すべきだとの声明を出している。

 とはいえ、暴言や嫌がらせが続けば心身の苦痛は深刻だ。困っている人のための手だてを考えていかなくてはならない。

 処罰を広げるだけで迷惑行為に歯止めは掛かるのか。被害の救済にはどういう方法が取れるのか。行政や地域も関わりながら、幅広く解決策を探る必要がある。

 改定案の概要では盗撮行為の規制も強化し、公共空間に限っている場所の規定を外す。スマートフォンの普及に伴い、学校や職場などでの多発が背景という。

 機器を相手に向ける行為も規制する。誤解がトラブルを生む恐れはないか。議論を深めねばならない課題は幾つも残されている。

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