〈台風19号1年11カ月〉 間もなく2年 思いさまざま 東北信の被災者に聞く

長野県 社会 台風19号
twitter facebook

 記録的な大雨で長野県内に甚大な被害をもたらした2019年10月の台風19号災害から1年11カ月。これまでの歩みを振り返って何を思うか、東北信地方の被災者7人に聞いた。

■長野市豊野町の障害者支援施設職員 萩原真理さん(49) どう動けば… 揺れた心

 雨脚が強まった同年10月12日から、高齢の両親、当時小学生だった娘と自宅近くの寺に避難していた。だが、13日早朝、千曲川堤防決壊を伝えるニュースがテレビで流れた。「大変」。後ろ髪を引かれる思いで家族を残し、勤務先の障害者支援施設「みのちグループホームセンター」(同市豊野町豊野)に急いだ。

 停電が続く中、萩原さんら職員はグループホーム9カ所に入居する計約50人が高台にある事業団系列の施設に避難するのを誘導し、食事や寝具を手配した。一方、自宅は浸水被害に遭い、半壊。大変な時に家族のそばにいてあげられなかった悔いと、知的・精神障害がある入居者を支える使命感のはざまで揺れた当時について「どう動くのが良かったのだろうか」。今も割り切れない。

 この1年11カ月で自宅を改修し、勤務先も食料など備蓄の見直しが進んだ。しかし、再び水害に見舞われないか不安は尽きない。「大丈夫?」と被災を気遣う入居者に励まされてきた萩原さんは「私はこの仕事が好き。納得がいくよう取り組みたい」と前を向き、「台風19号の教訓を生かし、早め早めに行動する」と誓っている。

■飯山市飯山の自営業 浦野和広さん(60) 強い雨で悪夢よみがえる

 飯山市役所の目の前で営んでいるギフトショップが1メートル40センチほど浸水しました。建物の2、3階部分は住居。13日早朝、既に膝くらいまで水が押し寄せていました。商品を高い所に避難させましたがどんどん水が入ってきて、乗せた台ごとひっくり返り、ボートで救出されました。

 一番ありがたかったのは翌14日、被災していない地域に住んでいる地元の合唱団仲間が駆け付けてくれたこと。ボランティアの方々もごみ出しを手伝ってくれました。その後、店を再開できましたが、今でも雨が強く降ると悪夢がよみがえります。台風シーズンはこれからです。

■中野市上今井の自営業 山口尚(ひさし)さん(75) 今も自宅の修繕終わらず

 自宅が全壊した他、経営する工場も高さ2メートル90センチまで水に漬かりました。自宅の2階に避難していましたが、想像を超えた水位にぼうぜんとした。弟の家に5カ月間居候して、自宅は生活に必要な範囲だけ直しましたが、まだ終わらず、1階の1室と2階だけで暮らしています。自分にとっての台風19号災害は続いています。

 お盆の雨の際、びくびくして何回も千曲川の水位を確認しました。いつ水害に見舞われるか分からない。水路の逆流や千曲川の支流の内水被害の防止など、行政には住宅地を守る対策を早く取ってほしいです。

■須坂市北相之島町の無職 島田邦勇(くにお)さん(68) 家に残した財産どう守れば

 自宅が浸水被害に遭って半壊しただけでなく、2階に上げていた家具を水が引いた後に1階に戻す途中、足の骨を折るなど苦労しました。1人暮らしで、今後体調が優れなくなったら誰に頼るかなど生活面の不安が尽きません。

 それに加えて大規模災害への不安があり、長雨が続くと千曲川の堤防に上がって水位を確認する癖がつきました。地区内で取り組む住民の間での避難呼び掛けはうまくいっていると思います。でも、自宅に残したままの財産を守ることができるのか。今後、同じような浸水被害に遭った場合、住み続けられる自信がありません。

■千曲市杭瀬下の市職員 本田瑞季さん(24) 防災情報の収集は欠かさず

 当時、避難途中に呼び出しを受けて市役所に詰め、観光客への影響を調べました。自宅は床上浸水し、半壊と判定された他、車3台が水没し、自分が使っていた1台は避難先の市更埴文化会館で被害に遭いました。災害時は避難先が安全かどうかにも気を配る必要があると痛感しました。

 半壊した自宅は家族と協力して修繕し、今は被災前と同じ生活に戻りました。でも、千曲川の水位など被災前はあまり関心がなかった防災や気象に関する情報収集は欠かさないようにしています。大雨の可能性があれば事前に家族とどこに避難するか相談しています。

■上田市岩下の無職 長谷川俊一さん(46) 寝ていても気になる川の音

 自宅の脇を千曲川が流れています。当時はそれまで見たことのない水が迫っていました。母と妻を先に逃がし、自分も避難しました。翌日に帰ると、家は残っていたけれど土台の一部が流失していました。

 川の音はいつも聞こえてきますが、雨が降っている時は寝ていても気になるようになりました。全国で川の増水による被害が相次いでいます。ニュースを見るたびに人ごとではないと思います。

 今年1月に母が亡くなりました。83歳でした。自宅で弔うことができた。やはり家が残っていて良かったと思います。

■佐久市常和の農業 鈴木双一郎さん(69) 復旧工事の進み遅く不安に

 千曲川支流の田子(たこ)川が氾濫した佐久市常和の区長を務めています。今も川の復旧工事が続いていますが、進みが遅い。お盆の雨では川岸に積まれた土のうが壊れ、不安になりました。復旧には川の拡幅に土地買収が必要で、難しい面はあると思います。ただ、なぜ工事が遅れるのか、もう少し情報が欲しいですね。

 台風災害後、地区内の有志で「常和復興まちづくり協議会」を設立し、地域の復興や防災に向けた活動をしています。復興のシンボルにしたいと、昨年はツツジ、今年はヒマワリを育てました。地元の人や訪れる人の心の癒やしになったらいいなと思います。

勤務先の障害者支援施設で同僚と話す萩原さん=8日、長野市豊野町豊野

レコメンドニュース

関連記事

長野県 社会 台風19号