上田市真田町「角間温泉 岩屋館」 2年ぶり営業再開へ 住民や常連客に支えられ

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 2019年10月の台風19号で被災した上田市真田町長の旅館「角間(かくま)温泉 岩屋館」が20日、営業を再開する。角間川に面した内風呂の基礎部分が土砂で押し流され、フロントに向かう木橋が崩落するなどの被害を受けた。しかし、住民の応援や常連客の待ち望む声に支えられ、再出発にこぎ着けた。

 岩屋館は、住宅地から角間川に沿って2・5キロ上った先に立つ。おかみの白石楠花(なみか)さん(72)は、眼前に迫る岩肌や川音に囲まれた角間渓谷は「日常を忘れてゆっくり過ごせる場所」と話す。茶褐色の炭酸泉と渓谷の清水を温めた2種類の湯が自慢だ。

 19年10月12日は行楽シーズン真っただ中の土曜で、予約は埋まっていた。白石さんは台風接近を知った弟から予約を全てキャンセルするよう言われ、不本意ながら従った。翌日すぐ戻るつもりで現金と予約台帳だけを持ち、市外に避難した。

 翌朝、岩屋館への市道には土砂が流れ込み、崩落していた。足を運べたのは約3週間後。車で5分ほどの道を3時間かけて歩き、たどり着くと旅館は土砂に囲まれ、巨石がごろごろしていた。露天風呂への階段の屋根もつぶれていた。天井は雨漏りで染みだらけ。じゅうたんも使えない状態で、野生動物が入った跡もあった。

 再開を諦める気持ちも芽生えたが、帰り際、夕日が渓谷を染める光景を見た。「本当にきれいで、やっぱり頑張ろうと思った」。不安は拭えなかったが、地元の知人や友人が見舞いに来たり、ボランティアで橋を渡したりしてくれた。常連客から「再開はまだですか」「死ぬ前にもう一度行きたい」といった連絡もあり、どうにかやってこられた。

 5月に契約企業の社員限定で営業を始めた。一般客の受け入れはエレベーターやストーブの故障もあって想定より遅れたが、白石さんは「日頃の騒音から離れてほっとひと息つき、明日からまた頑張ろうと思ってもらえる場所でありたい」と願っている。予約は20日からホームページで受け付ける予定。

被災時の状況を話す白石さん。背後の基礎部分が土砂で押し流された

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