〈社説〉ウクライナ情勢 衝突招かぬ対話の継続を

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 打開の兆しが見えてこない。ウクライナ情勢を巡る隣国ロシアと欧米の対立である。

 米ロのほか北大西洋条約機構(NATO)加盟国などを交えた高官級協議が相次ぎ開かれた。

 国境周辺に展開する部隊の撤収を求める欧米に対し、ロシアはNATOの軍事的脅威が高まっていると主張。安全保障の戦略上、互いに譲れない一線を挟んで議論はいずれも平行線をたどった。

 協議で解決できる余地がないとなれば、それを口実に武力に訴えようとする動きにつながりかねない。偶発的な衝突が、本格的な戦闘に発展し、ロシアの軍事侵攻を招く事態も懸念される。

 ウクライナは東部で親ロシア派武装勢力と政府軍の紛争が続く。親欧米を強め、NATO加盟を目指すゼレンスキー政権は昨春、2014年にロシアが一方的に編入した南部クリミア半島の返還を重要な政策課題に打ち出した。

 前後してロシアが国境付近やクリミアで軍事演習を始めた。米国も黒海に巡航ミサイル装備のイージス艦を派遣するなど、両大国のけん制が激しさを増した。

 ロシアは昨年12月、米国に対し旧ソ連諸国をNATOに加盟させないことを確約させる条約案を提起した。NATOにもウクライナの加盟断念や、軍備配置を東欧諸国が未加盟だった1997年当時に戻す合意文書案を示した。

 加盟するか否かは、当時国とNATOの判断だ。新条約や合意案は旧ソ連地域をロシアの影響圏に置くことを認めさせる内容で、米政権は今回、ロシアとの戦略的安定対話で一蹴している。

 ロシアは織り込み済みだろう。欧州との緩衝地帯であるウクライナを是が非でも勢力圏にとどめたい意思の表れと言える。

 プーチン大統領は昨年来、ウクライナとロシアの国民は「一つの民族」と再三強調している。7月には千年以上の歴史的一体性に関する長大な論文も発表した。

 冷戦後、NATOには東欧諸国やバルト3国が次々と加盟した。勢力を東方に拡大してきたことがロシアと欧米の間に軍事的緊張を高める要因になってきた。

 13日、ウィーンで開いた欧州安保協力機構の会合後、米ロの代表は軍事上のリスク低減に向けて対話を続ける考えを表明した。

 大きな溝を埋める妥協点を今は見いだしにくいとしても、武力衝突の回避に向けて関係国には一層の外交努力が求められる。話し合いを通じ、歩み寄りの糸口を探っていくほかない。

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