〈社説〉学術会議問題 任命拒否の撤回が本筋だ

長野県 論説 社説
twitter facebook

 日本学術会議は、国の特別な機関として政府からの独立が法で明確に保障されている。

会員の任命を時の政権が拒んだことは、法を逸脱する不当な権限の行使だ。問題の核心をうやむやにしてはならない。

 当時の首相が最終判断し、一連の手続きは終了した。もう結論は出ている―。学術会議の梶田隆章会長と会談した岸田文雄首相は、菅義偉前首相による会員の任命拒否について、これまでの政府の姿勢を繰り返した。

 一方で、学術会議と建設的な対話を重ねていくことは重要だと語り、松野博一官房長官に対応にあたるよう指示した。梶田氏は「少なくとも官房長官に検討していただけるということで、前向きに捉えたい」と述べている。

 菅氏は首相在任中、学術会議からの度重なる任命要求をはねつけ、批判にも耳を貸さなかった。岸田首相の真意は見えにくいが、立ち位置を変え、落としどころを探る意図もうかがえる。

 とはいえ、どのような形で対話を進め、具体的に何を話し合うのか、はっきりしない。拒否された6人の任命を検討し直すかどうかも明らかにしてはいない。

 日本学術会議法は会員を210人と明記し、3年ごとに半数を学術会議の推薦に基づいて首相が任命すると定める。科学者を代表する機関の独立と自律を重んじる法の趣旨を踏まえれば、任命はあくまで形式的な手続きで、拒否できる余地は本来ない。

 にもかかわらず、半数の入れ替えにあたって菅氏は、学術会議が推薦した105人のうち6人の任命を拒んだ。除外した理由は明らかでない。「総合的・俯瞰(ふかん)的な観点」「多様性の確保」といったもっともらしい言葉を並べ立てはしたものの、任命拒否を正当化する根拠にはならない。

 政治権力によるあからさまな介入は、学問研究のあり方を根本からゆがめ、言論・思想の統制や弾圧につながる危うさをはらむ。民主主義の土台を揺るがしかねない重大な問題である。首相が代わったからといって、済んだことにできない。非を認めて撤回し、任命し直すのが本筋だ。

 任命拒否には杉田和博官房副長官(当時)が深く関与していた。安倍政権の時期から会員の選任への干渉が始まっていたことも分かっているが、一端が見えたにすぎない。何より、法をないがしろにする政府の振る舞いが厳しく問われるべきだ。国会は徹底した追及を怠ってはならない。

レコメンドニュース

関連記事

長野県 論説 社説