ワイン造りを志す人が続々と【玉村豊男とNAGANO WINEの30年】〈第3部 学校をつくる〉①

東御市内のワイナリーやヴィンヤードの名前が入ったワイングラス

〈2003年、玉村さんは東御市で初となるワイナリーを開業しました。続いて、「リュードヴァン」と「はすみふぁーむ」が開業します。ここから、「第3部 学校をつくる」が始まります〉

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■2008年 東御市がワイン特区に

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 酒類製造免許には、最低製造数量の基準があります。果実酒のワインは年間6000リットル。ヴィラデストワイナリーもその基準を満たすように設備を整え、2003年に免許を取りました。その5年後の2008年11月、より小規模なワイン醸造所が開業可能な構造改革特区に、東御市が認定されました(※)。

 特区内では、ワインなら最低製造数量が年間2000リットルに緩和されます。高山村の特区認定が2011年ですから、長野県内では東御市が一番早かったんですね。

 どの市や町でも特区になれるわけではありません。そこに小規模な醸造所を開業したいという人がいて、初めて申請できます。東御市では、ヴィラデストが開業したころから、小山英明さん(リュードヴァン社長)と蓮見喜昭さん(はすみふぁーむ会長)がブドウ畑を作り始めていました。市はこの2人を対象にして特区を申請しました。当時、花岡利夫市長から「ワイン特区って、取った方がいいですかね」とか聞かれて、僕は「取った方がいいんじゃないですか」と応じたのを覚えています。

 小山さん、蓮見さんはそれぞれ、僕とも違った経験や思いでブドウ作りを始めました。醸造を始めたのはともに2010年。2人とも最初はヴィラデストで委託醸造をしてから独立しました。まだブドウの収穫量が少なかったので、市が特区になっていなければ開業までもう少し時間がかかったかもしれません。蓮見さんも小山さんも、数年後には年間6000リットルの一般免許を取りました。

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■ワイナリーが3カ所に 続くのは…

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 東御市にワイナリーが3カ所になったこの年辺りから、「ブドウを育て、ワインを造りたい」という人が増えてきました。ナゴミ・ヴィンヤーズの池敬紘(いけ・としひろ)さんが、こちらに移り住んだのもこの頃です。何人かが畑を持って準備をしていましたが、次にどこがワイナリーの免許を取ろうとしているかは、僕には分かりませんでした。中島豊さんがドメーヌナカジマを開業した14年まで、しばらく間が空きました。

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■思い詰めた人に「ちょっと待て」

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 東御市が小規模ワイン醸造所の特区に認定されたとはいえ、ここは巨峰の名産地。役場や農協にとっては「巨峰ファースト」です。そして、巨峰の生産者はだんだん高齢化していて後継者を求めており、優遇策がありました。「ワイン用ブドウを作りたい」と相談に行くと「巨峰をやりなさいよ」と勧められる状況でした。

そうやって巨峰を勧められた人が、「ワイン用ブドウを作りたい」と言って、うちに相談に来るわけです。年に何人かが訪ねてきました。「すぐやりたい」「会社を辞めるから弟子にしてくれ」なんて思い詰めて来る人もいます。

 僕は「ちょっと待ってくれ」「まずは1年くらい、時々ここに手伝いに来ながら様子を見て、奥さんを説得して、OKになったらやりなさい」と言っていました。「ワイナリーと言っても大半は農作業。畑仕事をやって感じをつかんでからにしましょう」と。

 週末になるとうちに手伝いに来る人が何人もいました。そして結局、翌年には会社を辞めてこちらに移り住む。そうやって、じわじわ、どんどんどんどん-と増えていきました。

 うちの「ヴィニュロンズリザーブ シャルドネ 2010」が「国産ワインコンクール2011」で金賞を取ったのは、そういう時期でした。この土地を見つけた時に町役場職員として案内してくれた土屋熊之さんが「お祝いをしよう」と言って、ここでパーティーを開いてくれました。

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編集部の注釈

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〈東信地方のワイン特区〉東御市は2008年11月、「とうみSunライズ ワイン・リキュール特区」に認定された。ワインは年間2000リットル以上、リキュールは年間1000リットル以上の製造量で酒類製造免許が取得可能になった。その後、2013年に坂城町、14年に上田市、15年に小諸市がワイン特区に認定。同年6月には、上記4市町に千曲市、立科町、青木村、坂城町の4市町村が加わった広域の「千曲川ワインバレー(東地区)特区」が新たに認定された。2021年11月には佐久市が加わった。

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 農家でない人がワイン造りを始める時、まず何をするのか…。次回は農地のお話です。

■【玉村豊男とNAGANO WINEの30年】記事一覧はこちら

https://www.shinmai.co.jp/news/list/tamamuratoyoo_30nen

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