大学での宗教勧誘とカルト〈学術のゆくえ〉隠岐さや香=思索のノート

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 ここ数日、大学と宗教勧誘の問題について考えていた。きっかけは今月初めに起きた安倍晋三元首相の殺害事件である。実行犯の動機が主に特定の宗教団体への怨恨(えんこん)に由来するとの報道が流れてから、事件そのものへの関心とは別に、「大学でその特定宗教団体に勧誘された」など人々の思い出話がSNSであふれ出した。

 また、今回の事件とは関係がないが、私が専門とする科学史関連分野の上の世代の研究者には、大学の同世代がオウム真理教の信者となった苦い記憶を持つ人は少なくない。オウムは1990年代に松本市や東京で猛毒のサリンをまく事件を起こした団体である。

 伝統ある宗教組織であれば、大学まで出向いていって学生に声をかけ、信徒としてリクルートするようなことはしない。だが、20世紀の大学はカルトと呼ばれる反社会的行動を辞さない宗教組織にとっての“草刈り場”となっていた。近年は取り締まりが厳しくなり昔ほどではないが、危険が消えたわけではない。過去に問題を起こした組織が名前を変え、学生信徒を動員して普通のサークルのふりをして活動を続けているからである。被害は大学以外の場にも…

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