これ読んでみて! デジタル編集部員お薦めの「夏本」・前編【ニュース・アップサイクル】

 面白いから、役に立つから、読んでみて!

 夏休みにゆっくり読書はいかがでしょうか?信濃毎日新聞デジタル編集部員のお薦め作品を、2回に分けて紹介します。前編では、信州ゆかりの作家の有名作品や人気漫画から実用書まで。新旧を問わずさまざまなジャンルがそろいました。酷暑を避けた冷房の効いた部屋やキャンプ場の木陰など、お好きなスタイルでお楽しみください。(信濃毎日新聞デジタル編集部)

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■違国日記(ヤマシタトモコ、祥伝社)ジャンル:漫画

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 人見知りの少女小説家と、両親を交通事故で亡くし引き取られためいの物語。

 悲しみと向き合ったり自分とは何かを追い求める思春期ど真ん中の朝と、彼女を見守る叔母の槙生の日常生活を中心に、2人の心の交流と成長を描いています。偶然1巻を手に取り読み出したら止まらなくなり、最新刊まで一気読みしました。

 登場人物の葛藤や会話を通じ、自分とは違う価値観に触れることができました。この作品に出合え、視野が広がったことがうれしいです。(山)

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■獣の奏者(上橋菜穂子、講談社)ジャンル:小説

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 主人公の少女エリンが、苦難の中で人や獣と出会い、成長し、人間社会の動乱に翻弄されながらも自分の人生を選び取っていく物語。

 ファンタジー小説は、人によって好みが分かれるジャンルだと思います。しかし、「ファンタジーはあまり…」という人にこそ手に取ってほしい。子どもたちには、初めての長編小説として選んでほしいです。

 架空の世界なのに、人々の暮らしは匂いまで伝わってきそうなリアリティーがあります。架空の生き物なのに、その生態は「ファンタジーだから何でもあり」ではなく、一つ一つに「そうあらねばならない」理由があります。聡明(そうめい)なエリンが獣と真摯(しんし)に向き合い、「なぜそうあるのか」を解き明かしていくさまに引き込まれます。

 文化人類学者でもある作者の豊富なフィールドワーク経験が土台にあるためか、作中に登場する架空の食べ物は、どれもリアルでおいしそう。遠い国の知らない街を旅している気分になれると思います。(佳)

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■アンダークラス(相場英雄、小学館)ジャンル:小説

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 「メモ魔」「地取りの鬼」と呼ばれる刑事が登場する相場英雄さんのシリーズ。

 タイムリーな経済、政治、社会の事象が盛り込まれているのも特徴で、登場する人物や企業、エピソードが、現実世界をにおわせます。

 政府は7月下旬、「外国人技能実習制度」を抜本的に見直す方針を示しました。途上国への技術移転を目的としながら、「安価な労働力」として日本の人手不足を補っている問題点を、アンダークラスはえぐり出していきます。

 秋田県能代市で高齢者が水路で亡くなっているのが見つかります。容疑者はベトナム人の女性。技能実習生として働いていたが過酷な労働環境などから逃げだし、たどり着いた能代市の老人施設で働き始めて間もなく、事件が発生。刑事は女性と向き合いつつ、各地を飛び回りながら、手帳をメモで埋め尽くしていきます。

 リアルな警察小説でありながら、緻密な経済小説としても楽しめるのが魅力です。自分が取材で訪れたことがある能代市の雰囲気を思い出しながら一気に読みました。(耕)

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■ハローサマー、グッドバイ(著:マイクル・コーニイ、訳:山岸真、河出文庫)ジャンル:小説

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 太陽系外の惑星に暮らす少年と少女のひと夏、そして、その終わりを描いたSFの名作。

 主人公の少年とその一家は、夏に首都から小さな港町の別荘へと移ります。少年は港町に暮らす同世代の子どもたちと仲を深め、一人の少女に特にひかれていきます。少年と少女が夏の青空の下で輝き、青年へと成長していく描写が美しい。

 一方、大人たちは夏の輝きに目もくれず、後ろめたい隠し事のような動きを続けます。そして、唐突に夏の終わりがやってきます…。大人たちの選択に対し、少年が出した答えとは?(半)

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■鬼平犯科帳(池波正太郎、文春文庫)ジャンル:小説

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 盗賊たちに「鬼平」と恐れられる火付盗賊改方(火盗改)の長谷川平蔵と部下たちの活躍を描いた池波正太郎さん代表作の一つ。

 江戸の治安を守る火盗改長官の平蔵は、金のためなら人々を殺す盗賊はその場で切り捨てる一方、「貧しい人からは盗まない、人を殺さない、性的暴行はしない」の三カ条を守る者には情けをかけます。非道を徹底的に憎むが、更生の見込みのある者には救いの手を差し伸べる。そのさじ加減が絶妙で痛快です。

 そんな平蔵は「良いこともすれば、悪いこともするのが人間」と話します。単純な白か黒かではなく、中間の灰色の妙に重きを置いているようです。現代社会にまん延する「二元論」に疲れたとき、手に取ってほしい一冊です。(山)

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■テック・ストレスから身を守る方法(著:エリック・ペパー、リチャード・ハーヴェイ、ナンシー・ファース、監修:竹林直紀、訳:中川朋、青春出版社)ジャンル:実用書

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 私たちとご同業のwebサービスに携わる皆さん。それだけでなく、1日のほとんどがパソコン仕事という皆さん。不調はないでしょうか。

 私、数年前に整形外科で「ストレートネック、いわゆるスマホ首」と言われました。そして今春も、首の凝りと頭痛がひどくなって、モニターの前に座っていられなくなりました。マウスをカチカチさせるのもつらい…。そんな折り、新聞広告で目にしたのがこの本です。

 約400ページに及び、その多くが割かれている学術的な内容は、ここでご紹介できるほど読み込んでいません。ですが、初めて読んだ人にも分かりやすく、「どうしたらいいか」という助言も書かれています。

 内容を誤って伝えるのは怖いので、あくまで私が学んだことをご紹介。まずその不調が「テック・ストレス」だと認識すること。そして、「緊張が続いているな」と思ったら席を立つことにしています。(典)

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