書評「たまふりの人類学」 (石井美保著) 他者の声に耳傾け ふるえる魂

 「たまふり」という語にふれ、評者が思い出すのはつい先日の出来事だ。その日は友人の尊父が亡くなった明くる日だった。ほのかに冷たい冬の風と春のぬくもりを予感させる日差しが交わる中、道を歩いていると、件(くだん)の尊父の姿が兆すのをはっきりと見た。肉眼で見えたわけではない。だが、頬にふれるようにして去っていくような気配が確かにした。

 そのような感性の在り方を当世は否定的に扱うと承知している。だが、魂にふれる、ふるえる様を指していう「たまふり」が…