ヒマラヤ遠征の仲間、田村真司さんを悼む 長く濃密な時間、忘れない 〈すぐそこにある未知〉石川直樹=思索のノート

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 パキスタンにあるガッシャーブルム1峰にどうにか登頂し、3日に帰国した。それから10日ほどたったある日の晩、友人から英文のニュース記事が送られてきた。日本人の登山者がパキスタンの山で亡くなった、という記事だった。最初は何げなくスマホの画面をスクロールしていたのだが、ローマ字で記載された登山者の名前を見たとき、ぼくの指は止まった。

 その記事には、2人の日本人クライマーがパキスタンにある標高およそ6800メートルの未踏峰に登攀(とうはん)中に滑落し、1人が死亡、もう1人がけがを負った、と書かれていた。2人とも自分の知り合いだった。それどころか、何度もヒマラヤ遠征を共にしてきた友人たちだった。直近のガッシャーブルム1峰のベースキャンプでも、彼らと顔見知りのパキスタン人と、この後に彼らがパキスタンにやってくるんだ、という話をしたばかりだった。