• 森の赤鬼 日本時代Ⅰ(3) 分からぬ「作法」ひとまずまねる

     C・W・ニコルが羽田空港から乗ったタクシーの運転手は、客室乗務員から聞いてメモしておいたホテルを回ってくれた。しかし、どこも満室だった。そのたびに肩を落としてホテルを出てくるニコルを運転手はじっと待っていてくれた。そうして、ついに見かねた運転手が…

    来日して空手を習い始めた22歳のニコル(左)。友人と共に
  • 森の赤鬼C・W・ニコル 日本時代Ⅰ(2) 胸高まる、小泉八雲の世界へ

     北米北極研究所長のマイク・マースデン教授は「ところで、いつ日本へたつんだい?」とC・W・ニコルに尋ねた。「来週の火曜です」。ニコルが答えると、教授は「じゃあ、それまでは私の家に泊まるといい。そうすれば、パーティーからも…

    ニコルが北極を3度目に訪れた時の夏の光景。先住民イヌイットの家族がアザラシの皮をなめす前に、脂肪をそぎ落す作業をしている
  • 森の赤鬼C・W・ニコル 日本時代Ⅰ(1) 知人頼り、夢の格闘技修業へ

     2年目の夏の調査は、順調に進んだ。前の年にカナダ・デボン島の地形や気候を頭に入れていた調査隊員たち…

    バルーンを使って行われた気象観測。ニコルが参加した3度目の北極調査より
  • 森の赤鬼C・W・ニコル 北極時代(21) シロクマの親子を射殺 心に生きた教え

    C・W・ニコルが放った銃声は、しんと静まっていた氷の山々に響き渡った。シロクマの大きな体が崩れ落ちると、その後ろからもう1頭のシロクマがニコルを襲った。1発、2発と撃っても、シロクマは倒れない。3発目を撃ち込んだ時、シロクマは「ウオーッ」とうなり声を上げ、ようやく向きを変えると闇の中へと去った。2頭のシロクマは…

    射殺したシロクマと21歳のニコル
  • 森の赤鬼C・W・ニコル 北極時代⑳ クリスマスの晩、危険な訪問者

     C・W・ニコルら越冬する5人の生活の場となるのは、丸い木のフレームに防水カバーを縛り付けた簡単な作りの小屋だ。そこでは当然ルールが必要となる。パンの作り方やトイレの使い方、道具の置き方やごみの捨て方まで、日を重ねるに従ってルールは整い…

    雪の塊を積み上げてイグルーを造るイヌイット。21歳の頃のニコルが撮影
  • 森の赤鬼C・W・ニコル 北極時代⑲ 武勇談で隊員たちと親しく

    C・W・ニコルを乗せて動きだした軽飛行機は、車輪の代わりにスキーを装備した機なので、ブレーキがない。エンジン出力を調整するスロットルは、最大限に開かれたままだ。前に傾いてスピードを上げた機体は、やがて滑走路から跳躍を始めた。このままでは、空中高く飛び上がり、コントロールが利かずに地面に激突するだろう。ニコルに軽飛行機を運転する技術はない。あったとしても…

    テントの中で過ごす20歳の頃のニコル
  • 森の赤鬼C・W・ニコル 北極時代⑱ 息ぴったり 地質学者と調査

    カナダ・デボン島に降り立った科学者とその助手たちは、C・W・ニコルと機械技師が設置したベースキャンプで荷物を整理する間ももどかしく、慌ただしく調査地へと散っていった。ところがイギリスから来た地質学者には、同行する助手がまだ付いていなかった。彼の大学の研究室から学生たちがこの地へ来るのは…

    植物を採取する21歳の頃のニコル
  • 森の赤鬼C・W・ニコル 北極時代⑰ 時間との競争 ベースキャンプ作り

    C・W・ニコルが軽飛行機から降り立ったデボン島は、まだ夏には遠い冷気の中にあった。頭皮がヒリヒリと痛む寒さだ。並みの人間だったら、すぐさま逃げ帰ってしまうだろう。しかし、冷え切った島の空気は、ニコルにとって心地よいものだった。イギリスでのつらい失恋の痛みも、叔父グウィンとの壮絶な対決が残した苦みも、体に染みわたる島の大気に拭い去られていくようだ。それに、感傷に浸っている時間はなかった。北極の夏は…

    北極イワナを手にする21歳の頃のニコル
  • 森の赤鬼C・W・ニコル 北極時代⑯ 世界最大の無人島 先発隊に

    1961年4月、C・W・ニコルは最年少の遠征隊員として、目的地のカナダ・デボン島の地に立った。世界各国から集められた科学者からなる遠征隊の中にあって、20歳のニコルは異色の存在だった。ニコルを呼んだ北米北極研究所の所長マイク・マースデン教授は、ニコルの若い体力と2度の北極体験に期待したのだ。デボン島は…

    デボン島遠征隊に参加した科学者らと共に、写真に納まる20歳のニコル(右から5番目)
  • 森の赤鬼C・W・ニコル 北極時代⑮ 恨みが激情に 叔父との決別

    C・W・ニコルの怒りに燃えた目は、叔父グウィンのプライドをひどく傷つけたようだった。かつて、自分の力におびえて目を上げることもできず泣いていた少年が、成長して現れ、鋭い反抗の目を向けたのだ。叔父はいきなりニコルに跳びかかると、左手で上着をつかみ、右のこぶしを振り上げた…

    12歳の頃のニコル。子どもの頃から叔父にいじめられていたことが、成人後の衝突につながった
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