• 玉村豊男とNAGANO WINEの30年〈第1部 農家になる〉④est~ここだ!

     「そんなに眺めが大事かね。眺めがいい場所はあるけれど」「今日来た土産に、見るだけ見ていくか」。案内してくれた人たちのその言葉で、僕らはまた車に乗り込みました。「水がないから住めないよ」。そう念押しもされていたんですけれど。森の中を真下に向かう細い道を進みました。普段は車が通りませんし、木の枝や草は伸び放題…

    ヴィラデストワイナリーからの眺望です。立つ場所によって眺めは変わりますし、青空でも、雲がかかっていても美しい(撮影は2021年8月)
  • 玉村豊男とNAGANO WINEの30年〈第1部 農家になる〉③土地探し

     僕は運転をしないので、土日になると妻が車を運転して、土地を探しました。あちこち回っているうちに、気に入った場所が出てきましたが、水がなかったり、どなたかの土地だったりで、なかなか決まりません。土地探しはかれこれ1年半くらい続きました。小諸市では…

    〈取材ノート〉晩秋の晴れた日、小諸市糠地を訪ねました。標高950メートル。北アルプス、中央アルプス、そして南東に富士山が大きく見えました。オーナーの池田岳雄さんが初めてここに立った日、眼下に広がる雲海からここ一帯の台地が浮かび上がって見えた-。それが「テールドシエル(天空の大地)」の由来です。池田さんは還暦の年に玉村さんの著書を読んでワイン造りを志しました。その後、玉村さんは「池田さんが古希になるころ…」と、ある予言をしたそうです。池田さんは現在68歳。「2年後には、玉村さんとの約束を果たすぞ…という心持ちです」。どんな予言かは…またいずれ話していただきましょう。
  • 玉村豊男とNAGANO WINEの30年〈第1部 農家になる〉② 老後と死を思う

     その時の輸血で、C型肝炎になりました。当時はまだC型のウイルスが特定されておらず、非A非B型と言われていた時代です。「輸血後肝炎」とも言われ、輸血すると10人に1人は感染すると聞いていました。肝炎は潜伏期間があるので…

    〈取材ノート〉ヴィラデストで、こんな話も聞きました。「ブドウの実は、その年に伸びた枝になる」。農家の皆さんには「そんなことも知らないのか」と言われそうですが…。前回紹介した「年を経た木の方が良い実を付ける」と合わせ、付箋に書いてデスクに貼っていたら、同僚に「これは何かの格言ですか」と聞かれました。垣根仕立てのワイン用ブドウは地面の近くに実がなっています。そうなるように摘果しているのかと思いましたが、もともとその年に伸びた枝の下から2、3芽の辺りに実がなるそうです。(写真は2021年8月撮影)
    • 玉村豊男とNAGANO WINEの30年〈第1部 農家になる〉① 吐血

       血を吐いたことがありまして。1986(昭和61)年2月、軽井沢町の自宅でした。月30本くらいの原稿を抱え、一番忙しかった時期です。生活は夜型で、お酒も相当飲んでいました。日中はテニスをして、夕食に…

      〈取材ノート〉取材で初めてヴィラデストワイナリーを訪ねたのは、2021年6月。畑では、ブドウの枝が伸び始めていました。よく見ると、1粒が数ミリという小さな実を付けています。「若い木より、植えてから年を経た木の方が、良い実を付けるんですよ」と広報のSさん。この連載の〈プロローグ〉で玉村さんも話していました。幼い木は実をたくさん付ける若木に育つ。その後は年を経るごとに、実の数は減るけれど、減るからこそ、その実は味わい深いワインになる-。人の一生に重ねたい話だなあとうれしくなり、カメラマンに写真を撮ってもらいました。
    • 玉村豊男とNAGANO WINEの30年〈プロローグ〉これからを考えるためにこれまでを語ろう

       僕がワイン用ブドウを初めて植えたのは1992年。もう30年になりますね。ワイナリーを造ろうと決意したのが2002年だから、それからでも20年。日本では、ようやく本格的なワイン造りが始まろうとしていた時代です。ワインを飲む人も少しずつ増えていたので、将来はもっと伸びるはずだと思っていました。  長野県は、ワイン用ブドウの生産量が全国トップです。そして

      【たまむら・とよお】
エッセイスト、画家、ワイナリーオーナー。信州ワインバレー構想推進協議会会長。
1945年、東京生まれ。東京大フランス文学科卒。68~70年、パリ大言語学研究所留学。72年より文筆業。83年に軽井沢町、91年に東御市に移住。2004年、ヴィラデストガーデンファーム アンド ワイナリーを開業。14年、日本ワイン農業研究所を設立し、ワイナリー「アルカンヴィーニュ」を拠点に千曲川ワインアカデミーを開講。著書は「パリ 旅の雑学ノート」「田園の快楽」「病気自慢」など多数。神奈川県箱根町に美術館「玉村豊男ライフアートミュージアム」がある。
    • インタビュー連載「玉村豊男とNAGANO WINEの30年」が始まります

       玉村豊男さんは1992年、開墾した斜面にブドウの苗木を植えました。妻抄恵子さんと、その眺望に一目ぼれして移住した土地でした。  長野県を語る時、ワインやブドウ畑がある風景は今や欠かせない魅力になっています。玉村夫妻が…

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