「日本に憲法はあるんか」 在野の憲法研究者/釜ヶ崎の弁護士・遠藤比呂通さん〈アーカイブ 芦部信喜・平和への憲法学〉第6部 インタビュー「現代に問う」⑬
■在野の憲法研究者・釜ケ崎の弁護士 遠藤比呂通さん
芦部信喜先生が開拓した「憲法訴訟論」を学びたくて東京大4年の時、先生のゼミに入りました。論文を書いて助手に内定後、病気で1年留年しているうちに芦部先生が定年退官され、樋口陽一先生(現東大名誉教授)の助手になりました。憲法訴訟論は一貫して研究しました。
東北大の助教授をしていた1995(平成7)年夏のことです。ある研究会の帰りに初めて釜ケ崎(大阪市西成区の日雇い労働者街)を夜訪れ、衝撃を受けました。何十人もの人が路上に寝ていて動かない。そこを誰も気に留めないで歩いていく…。
案内してくれた日雇い労働組合の委員長に「おまえ何の仕事しているんだ」と聞かれ、「東北大で憲法を教えています」と答えると、こう言われました。
「日本に憲法はあるんか」
この言葉がだんだん自分の中で重い問いになっていきます。
翌年、大学を辞め釜ケ崎で炊きだしの手伝いをしたり、鉄筋工の見習いをしたりしているうちに請われて、98年に釜ケ崎近くに法律事務所を開きました。当時、大学で法律学を…