市井の人に見る戦争が残した傷 塚本晋也監督作品「ほかげ」 戦火近づく危惧、警鐘と祈り込めて撮影
■「次世代が行かないで済むように」
凄絶(せいぜつ)な南方戦線の地獄を「野火」(2014年)で表現した塚本晋也監督が、終戦後の深い傷痕を新作「ほかげ」で写し出した。背景にあるのは戦争が近づいているとの危惧。「次の世代が一番心配。子どもが将来戦争に行かないで済むようにという祈りを込めて作った」と語る。
物語は戦後の焼け跡を生きる市井の人々に焦点を合わせる。居酒屋で体を売り暮らす女(趣里)のもとに、闇市で万引して生きる男の子が居着くようになり、客の復員兵も合流して疑似家族のような様相に。しかし、復員兵の様子がおかしくなり、女にも異変が起きる。男の子は、仕事を持ちかけてきたテキ屋の男(森山未来)と旅に出る。
「ほかげ」はベネチア国際映画祭のオリゾンティ部門に選出され…