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50代男性の強制不妊手術 県が理由書き換え助言

当時50代だった男性の「優生手術申請書」のコピー。入所施設で女性暴行未遂を繰り返したとし、「再発防止も兼ねての避妊も大切」との申請理由が記されていた当時50代だった男性の「優生手術申請書」のコピー。入所施設で女性暴行未遂を繰り返したとし、「再発防止も兼ねての避妊も大切」との申請理由が記されていた
 旧優生保護法(1948〜96年)下の1985(昭和60)年、県内の当時50代の男性が、強制不妊手術を受けたとみられるまでの経過が23日、信濃毎日新聞の情報公開請求に対し県が開示した資料で分かった。当初、性欲を衰えさせることを理由にした手術申請書が、県の助言で「本人の保護」に目的が書き直された経過が判明。当時、手術ありきで、手術の適否の審査を通りやすいよう理由付けされていた可能性が浮かんだ。

 この男性は、県が保管する資料で強制不妊手術を受けたことと個人名が今月、判明。個人名の判明は、82年に施術されたとされる当時30代の女性に続き2人目だった。ただ、手術理由などについて県は明らかにしていなかった。

 県が開示したこの男性の「優生手術申請書」は2枚。当時松本市在住だった男性について、不妊手術が必要と判断した医師が記入し、手術の適否を判断する「県優生保護審査会」に申請した書類とみられる。

 最初に作成されたとみられる申請書の手術理由の欄には、知的障害のある男性が、入所施設の女性入所者に性的暴行未遂を繰り返したと記述。「再発防止も兼ねての避妊も大切と考え申請とする」としていた。

 一方、修正したとみられる申請書では、男性が性的暴行未遂を繰り返したとしつつ、「子を設けても養育能力は全くなく、又経済的な面から見て、本人保護のため、優生手術が必要と思われる」とし、松本保健所の85年6月11日付の受理印があった。

 今回開示された資料には、優生手術申請書2枚とは別に、当時の県衛生部保健予防課が、松本保健所に対して理由の書き直しを助言したとみられる書類が3枚あった。最初の申請書について「この理由だと、(審査会の結論が)否又は保留になる可能性が大」などとし、「社会に出、子供を設けた場合、生活能力の面からみて本人保護のため優生手術が必要である」との文章を例示。この例に沿って修正が行われていた。

 立命館大生存学研究センターの利光恵子客員研究員は、「当初理由が審査会で通らないことを見越し、理由を変えた可能性がある」と指摘。最初の申請書の記述が実際の理由だったのではないかと推測する。ただ、手術で性欲を抑えたり、性的暴行の再発防止につなげたりすることは根拠がなかったという。

 県保健・疾病対策課の西垣明子課長は取材に「当時、その方法を選択せざるを得ない状況があったかもしれないが、人権上は問題があったと受け止めている」と述べた。

(7月24日)

長野県のニュース(7月24日)